第22章 リヴァイ、悔いなき選択 奇行種、困惑
──カラーンコローン──
「いらっしゃい!あっ!調査兵の嬢ちゃんじゃないか?」
「クレア!いらっしゃい。壁外調査、無事だったのね!」
香油屋の夫婦は今日も笑顔でクレアを迎え入れてくれた。いつも明るく包み込んでくれるその笑顔は、今は亡きクレアの両親を思い出し、胸の奥をあったかくさせてくれる。
「グレンさん、マーサさんご無沙汰しております。実は前々回の壁外調査では怪我をしてしまったのですが、この通り元気に戻りました。今日は香油を買いにきたんです。また生きて買いに来れて嬉しいです。」
クレアは心配してくれていたマーサに笑顔で答えた。
「それにしても嬢ちゃん!少し大人っぽくなったか?そういや好きな人がいるって言ってたな!うまくいったのかい?」
さっそく核心を突かれるような質問に一瞬ビクッとしてしまった。しかし、クレアにも聞きたいことがあったのを思い出した。
「は…はい。色々あって…うまくいきました。」
「そうかいそうかい!!そりゃよかった!」
グレンはクレアが手渡した小瓶に追加の香油を入れながら豪快に笑ってみせた。
「あ、あの、確かおまじないがかけてあるって仰ってましたが、いったいどんなおまじないだったんですか?」
色々と偶然が重なったとはいえ、見事にクレアの恋は成就したのだ。クレアはあの時の話が気になっていて仕方がなかった。
「フフ、あれはね。たいしたものではないの。でも少しでもクレアに幸せになってほしくて、“希望”と“成就”って意味をもつ花の香りを少しだけ混ぜたのよ。こんなに可愛いクレアに素敵な恋をしてもらいたかったからね。想いが叶ったのなら本当に良かったわ。」
そう言うと、マーサは優しくクレアの頭を撫でた。
そういう事だったのか。クレアは夫妻の粋な計らいに心を和ませた。それに希望という意味も含まれているのなら壁外調査の出立前の願かけにはぴったりだ。
これからも大切に使わせてもらおうとクレアは思った。
「それにしても、こんなに可愛い娘さんが調査兵団で兵士をしているなんて、ご両親はさぞ心配しているんじゃない?」
「あ、両親はシガンシナ区の襲撃で亡くなっているので、私の身内はもういないんです。」