第22章 リヴァイ、悔いなき選択 奇行種、困惑
「いいえ、兵長。出ていきません。私はここにいます。」
「ハッ、見上げた忠誠心だな。聞いた後で後悔するなよ。」
「で、リヴァイ。いったいなんなの?」
少し間をおくと、リヴァイは口を開いた。
「もし────────たら、──────。」
「!?」
「そしたら後は必ず俺がなんとかしてみせる。」
「リヴァイ…それって……」
「あぁ、もう後悔はしたくねぇ。これは、俺の悔いなき選択だ。」
一瞬静まり返る執務室。
でもシンとなったのはわずかに一瞬だった。
「わかったよ…そこまで言われちゃしょうがない。エルヴィンにバレたら始末書かな?アハハハ!モブリット、聞いてて本当によかったの?名実ともに運命共同体になっちゃったよ?」
「内容が内容だけに……問題ないですよ!!」
2人の頼もしい表情に安堵すると、リヴァイはクレアが待っている自身の執務室まで急いだ。
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執務室の扉を開ければいつものクレアの笑顔がリヴァイを出迎える。
ただ今日は壁外調査であるため、クレアはキッチリと髪をまとめている姿だった。
「おはようございます、兵長。すぐに紅茶を淹れますね。」
前回の壁外調査前は色々とすれ違った挙げ句に当日の朝にオルオの馬が疝痛を起こした。
それに比べれば、今回は驚くほど穏やかな出立前だった。
仕事もほとんどやるとこはない。
2人でやってしまえばあっという間に終わってしまった。しばし沈黙に包まれる執務室。
「どうした?奇行種のお前がまた緊張か?」
「そ、そうですね…今回は小規模遠征と聞いていましたが、やっぱり少しは緊張します。」
「大丈夫だ…」
「え?」
ふとリヴァイを見れば、小さく両手を広げてクレアを見つめている。これはもしかしなくても“抱きしめてやる”のポーズであろうか?
少し気恥ずかしさもあったが、もう会えないかもしれないと思うと、躊躇なく自分の身体は動き、リヴァイの腕の中にスッポリと収まるように抱きついた。
「お前は強い。自分を信じていい。それに…」
リヴァイはクレアのシャツの襟の内側に唇を滑り込ませると、外からは分からないように器用に跡を付けた。