第21章 奇行種、疾走、驚愕、誘導尋問
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クレアは馬房掃除と馬具点検を終わらすと、フレイアの姿を探し始めた。
1ヶ月近くもの間、愛馬デイジーの馬房掃除をかわってもらったのだ。お礼を言わなくてはと思っていた。
食堂ではすれ違いだった様で、厩舎で会えるかと思ったのだが見当たらない。
少し厩舎の周りを探していた時だった。
「クレアーーーーー!!」
クレアのよく知る人物の声が自分を呼んでいる。
「あっ………。」
その声の方向をむくと、敬愛してやまない我が分隊長が手を振ってこちらに向かってきているではないか。
「おーーーーい!!」
ハンジは大きく手を振りながら満面の笑みで、走ってくるが、何故だが若干内股になってるのが気になる。
「クレアってばーーーー!!」
朝日を浴びながらキラキラと笑顔を向けているハンジの背後には、バラの花びらが舞っている様に見えるのだが……クレアはもしかしなくてもイヤな予感しかしなかった。
「ハンジさん…おはようございます!今日からまた訓練頑張ります!」
「うん!うん!うん!」
ハンジはクレアに目線を合わせるように腰を曲げ、前屈みになると、両手をポンッと肩に置かれた。
ハンジは何も言わない。
何も言わずにただ笑顔で頷いている。
怖い……何故だがそれが物凄く怖い……
両肩に置かれた手がやけに重い…
──詳しくは夜聞かせてもらうよ──
きっとこの目はそう言ってるに違いない。
後ろにいるモブリットを見れば、両手を合わせて「すまない」といった表情をしている。
さすがに今夜は逃れることはできなさそうだ。
すると、ハンジはクレアの返事を聞かずに、再び手を振って行ってしまった。
どんな質問攻めが待ってるのか…クレアは思わずブルっと震えがした。
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夜、クレアはハンジの執務室に向かうため、兵舎内の廊下を歩いていた。
「はぁ……疲れた……」
クレアは珍しくもぐったりしている。
訓練自体は慣らしの自主トレと、少しリヴァイ班に混ぜてもらうメニューだったので、そこまできつくはなかった。
クレアの疲労の原因は別にあったのだ。