第21章 奇行種、疾走、驚愕、誘導尋問
「いやだなぁ〜エルヴィン。決まってるじゃないか〜。」
「いや、ハンジ。俺もサッパリ分からん。」
すかさずミケも突っ込んだ。
「んもう、勘の鈍い男達だなぁ!リヴァイとクレアの事だよ!!このハンジ・ゾエの粋な計らいにより、2人は見事くっついたってわけ!」
「ハンジ、2人がくっついたってまさか…」
「私もまだ詳しくは聞いてないんだけどね、一昨日の大雨でびっしょびしょのグッチョグチョになって雷がドカーンと走って一丁上がりよ〜。アハハハハ!」
言いたいことは十分に伝わったが、品はおろか、デリカシーの欠片もない表現に2人は思わず絶句をしてしまった。目の前にいるこの人物は、女というカテゴリーに入れていて本当に問題はないのか疑問なところだ…
しかし、エルヴィンはハンジの話を聞いてやっと、さっきクレアに感じた違和感の正体がわかった。
屈託のない幼い笑顔だったクレアに、かすかだが“女”の雰囲気がまとっていたのだ。
そうしたのはもしかしなくてもリヴァイであろう。
早く結ばれてくれと願ったのは自分であるというのに、いざそうなってしまうと、想いとは裏腹に少し胸が痛んだ。
「エルヴィン、色んな事情から早く2人にはくっついてもらいたかったんでしょ?ひと肌脱いだ私に臨時手当をくれてもいいんじゃない?」
そういえばハンジには全て見透かされていた。
そんな事を思い出したエルヴィンはハンジの要求を飲んでやるしか無さそうだった。
「はぁ…、何が欲しいんだ?新しい実験道具か?」
「いいや、酒だ。私が1番好きなやつ!エルヴィンのポケットマネーで頼んだよ!じゃっ!」
ハンジは言いたいことだけ言うと、食い散らかしたまま意気揚々とエルヴィンの執務室を出ていった。
「はぁ、ハンジにはしてやられたな。あの酒は懐が痛い。」
「でも、望み通りにいったなら文句は言えねぇだろ。これでお前もやっと吹っ切れたか?またいつものとこ付き合ってやってもいいぞ。」
ミケがフンと鼻をならした。
「そうだな…そうしよう。」
力なくエルヴィンは答えた。
ミケが出ていくと、心にポッカリ穴が空いたような気分になった。
しかしこれでいいのだ。そう自分に言い聞かせながらエルヴィンは山積みになっている仕事を淡々とこなしていった。