第21章 奇行種、疾走、驚愕、誘導尋問
すると、向かいから書類を抱えたエルヴィンがやってきた。
「あ、団長。おはようございます!」
クレアは全快をアピールする様にはりきって敬礼をして見せる。
「クレアおはよう。確か今日から訓練再開だったね。身体は大丈夫かい?無理はしないでくれよ。優秀な兵士にまた怪我をされては困るからね。」
「はい、怪我のないよう十分気をつけます。」
クレアは厩舎に向かおうとしたが、エルヴィンの抱えている書類が気になってしまった。
できることなら手伝っていきたいが…今は時間がない。
「あ、あの団長…本当ならお仕事の手伝いを申し出たいのですが…訓練開始までに馬具の点検などもあって…」
エルヴィンはクレアが何を言おうとしているのかすぐにわかった。
医師から訓練の禁止を告げられた時はひどく落ち込んでいたとリヴァイから聞いていた。
それがやっと解禁になったのだ。時刻もそろそろいい時間になってきている。一刻も早く厩舎に行きたいはずだ。
「気を遣わせてしまってすまないね、私の事はいいから厩舎に行きなさい。また時間がある時にお願いするよ。」
「す、すみません…では失礼します。」
笑顔で敬礼をし、走っていったクレアからはいつも通りのキンモクセイの香り。
「…………。」
それに加え、何かいつも通りでないものを感じたが、その正体はわからず、首をかしげたままエルヴィンは執務室に向かった。
執務室に着き、仕事の準備を始めると、ミケとハンジがやってきた。
「エルヴィーン!おっはよう!」
ハンジは遠慮をすることなく引き出しから焼き菓子を出すと、応接セットのテーブルに並べてどっかり座り込んだ。
「2人そろってどうした?ハンジはやけにご機嫌だな。」
「俺は書類の提出だ。ハンジとはすぐそこで会った。」
「あぁ、ミケ、早目に提出してくれて助かったよ。で、ハンジは手ぶらな様だが?」
エルヴィンとミケはムシャムシャと食い散らかすハンジに目を向けた。
「え?私?私はエルヴィンに臨時手当の申請をしにきたんだよ〜。」
「……ハンジ、臨時手当とはなんだ?」
もちろんだが、言ってる意味がさっぱり分からずエルヴィンは怪訝な顔でハンジに問いかけた。