第21章 奇行種、疾走、驚愕、誘導尋問
クレアが食堂に向かうため出ていくと、それと入れかわるようにエルドが入室してきた。
「おはようございます、兵長。今日の訓練のメニューなのですが………」
訓練メニューの確認にやってきた様だ。
「あぁ、それで構わない。幹部組はあと2,3日で訓練復帰できそうだ。それまで頼んだぞ。あと、今日からクレアが訓練再開だ。ハンジが戻るまでうちの班員で面倒見てやれ。」
「分かりました!」
「エルド、待て。」
エルドは敬礼をし、退室しようとしたが、再びリヴァイから呼ばれ振り返る。
「………助かった。」
少し間を置きリヴァイは声をかけた。
「え?いったいなんのことでしょうか…?」
何か礼を言われる様な事をしただろうか。エルドは今ひとつピンとこなかった。
「以前、休憩室で相談した件だ。色々と番狂わせがあってな。全て教え通りとはいかなかったが…まぁ結果うまくいった。」
「え?」
「アイツらにも礼を言っといてくれ。」
うまくいったということは、リヴァイの想いは無事に成就したということか。
エルドは感極まり「おめでとうございます!」などと言ってしまいそうになったが、おそらくあまり騒がれたくはないだろう。
「兵長のお力になれたのなら何よりです。皆にも伝えておきます。」
エルドは気を利かせ控えめに受け答えをすると、執務室を後にした。
リヴァイはあまり周りに言うつもりはなかったが、エルド達には、一応世話になったのだ。
今後も何か相談することがあるかもしれないと思い、ひとまず事実だけだが報告をした。
自分の班員はこれで良いのだが、問題はエルヴィンとミケだ。あの2人にはおそらくもうハンジがデリカシーの欠片もなく大袈裟に公表しているに違いない。
自分から言う手間が省けると言えば省けるのだが、こっちの後処理が面倒臭そうだ。
リヴァイは今度はどんな手でハンジに断末魔の叫びを上げさせるか考えながら仕事を片付け、食堂に向かった。
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クレアは朝食を済ませると、厩舎に向かうため急ぎ足で兵舎の廊下を走っていた。
今朝はリヴァイの執務室で色々とすったもんだがあったため、そこまで時間に余裕がない。
1ヶ月近く放ったらかしていた馬具の点検もできたらしたい。
とにかく今は時間が惜しかった。