第21章 奇行種、疾走、驚愕、誘導尋問
むきになって怒り始めたクレアだが、リヴァイはしたり顔で悪い笑みをこぼしている。
やはり、計画的な犯行だったのだろう。
そのしたり顔に怒りがヒートアップしそうになったが、同時に思い出してしまったのは、キスマークを付ける意味。
改めて1つ1つ思い出せば、顔が真っ赤になっていき、クレアは何も言えなくなってしまった。
自分を好きだと想うからこそ付けた跡かもしれないのに、一方的に怒るなんてできない。
「も、もう…いいです……」
クレアはリヴァイに背中を向け手早くシャツのボタンを閉めると、怒るのをやめて仕事を再開させようとした。
「なんだよ、拗ねるなよ。」
「拗ねてなんかいません……」
その態度は明らかに拗ねているだろ。
「はぁ…」
リヴァイは少しやり過ぎたかとため息をつくと、後ろからそっとクレアを抱きしめた。
「!?」
「少し意地悪が過ぎたな、悪かった。でも、跡を付ける意味くらいは分かってくれてるだろ?」
付ける意味…その言葉にドキンと心臓が大きく脈打ってしまい、クレアはただただうつむくことしかできなかったが、リヴァイはその反応だけで十分だった。
クレアの身体に残した想いの意味はちゃんと伝わっていたのだから。
しかし、これで終わらないのが奇行種クレアだ。
「あ、あの、今度私も兵長にキスマーク…付けてみたいです…その時は、団長かミケさんと大浴場に行ってくださいね!」
「あぁ?!」
リヴァイの眉間に皺が寄ったのを確認すると、今度したり顔になったのはクレアの方だった。
あぁ、そうだった。忘れていたが、コイツはハンジ班の奇行種だ。
いたずらが過ぎれば振り回されるのは俺の方かもしれない。
「…わかった。お前からのキスマークは歓迎するが、その姿でエルヴィンと風呂は勘弁だ。いき過ぎた意地悪は今後気をつけよう。」
リヴァイは軽く両手を上げて降参してみせる。
さすがにやってみる度胸など今の自分にはなかったが、少しはギャフンと言わせることができただろう。
機嫌を直したクレアはテキパキと仕事を進めていった。