第5章 間もなく卒業
先に進んだ方がわずかに早く森を抜けられそうだが、入り口に戻る方が兵舎には近いだろう。
自分よりもはるかに大柄なルドロフを抱きかかえると、ガスを思いきりふかし、森を抜けていく。
幸いなことにここまではほとんどガスを消費していなかった。人1人抱えても森を抜けるまでは余裕で持ちそうだ。
入り口まで戻るとキース教官とその部下が、血塗れの2人に気づき飛んできた。
クレアの半身もルドロフの血で濡れている。
「2人とも一体どうした!?」
「森の中盤あたりでルドロフが落下し負傷しました。私は落ちた後に気づいたので負傷した経緯まではわからないのですが…太腿を刃で切っているので応急処置が必要です、早く医務室へ!」
キース教官は部下に指揮を任せるとクレアと共にルドロフを医務室まで運んだ。
意識はあるが、痛みでうなされている。
医務室までつきルドロフをベッドに寝かせるが、肝心の医師がいない。
「先生はお留守ですか?」
「あぁ!しまった。今日は近隣の医師同士で勉強会があるといって休暇をとっていた…街の病院まで運ぶか…」
そうしてやりたいが、太腿からの出血がひどい。
止血をしながらでも街の病院まで運んでる間に容態が悪化する可能性も高い。
「………教官!私が応急処置をやります!」
「なんだと?」
「頭部の損傷は先生でなければ診断できませんが、今早急に必要なのは太腿の手当てです。私は医者の娘です。外傷の手当はできます。教官!先生の居場所はわかりますか?」
「居場所はわかるが…」
「早馬を出してください。私はその間に応急処置の準備をします!時間がないので教官も手伝ってください。」
「わかった、頼んだぞ!」
キース教官はいったん医務室を出て早馬をだしにいった。
クレアは医務室をぐるぐるとまわり必要な物をかき集める。
消毒液、縫合針、糸、麻酔薬、生理食塩水、点滴、抗生剤、そしてガーゼに包帯だ。
キース教官が戻ると、ルドロフのズボンをハサミで切り、太腿の付け根を布でしばり止血をし、患部を確認する。
うつ伏せで倒れていたため、傷口に砂や土がこびりついていた。
このままでは治療ができない。
「教官、ルドロフの両肩を力いっぱい押さえていてください…」
「おい、何をする気だ…」