第21章 奇行種、疾走、驚愕、誘導尋問
自身の恋の成就を、こんなにも喜んでくれているフレイアの姿に、改めてクレアは友情の素晴らしさを感じた。
「もう!詳しいことはこれからネチネチと聞かせてもらうからね!」
「お、お手柔らかにお願いします……」
よく見ると、フレイアは風呂の準備をしているところだった。
「あ、もしかしてフレイアお風呂にいくの?私も一緒に行こうかな?」
「うん、ちょうど準備してた所だったの!一緒に行こう!」
クレアもすぐに風呂の支度を始めた。
脱衣所で服を脱ぎ、カゴに入れていく。大浴場は混んではいなかったが、貸し切り状態ではなく数人の女兵士が使用中だった。2人も手早く服を脱ぎ、浴室まで入ると髪や身体を洗い始めた。
2人でいつも通りにイスに腰かけシャワーを浴びているのだが、なんとなく周りの視線がいつもと違うようにフレイアは感じた。隣同士に座っているため、その視線が自分に向けられているものなのか、クレアに向けられているものなのか分からない。
いったい何なの?
「ねぇ、クレア…」
フレイアが声をかけた時だった。
「ちょっ!ちょっ!ちょっとまった!」
長い髪を洗い終えたクレアを見てフレイアは思わず声を上げてしまった。
「え?フレイアどうしたの?」
「ど、どうしたのじゃない!こ、これ!こんなにヤバイって!!」
フレイアはあたふたと慌てているが、クレアはまったく意味が分からず首を傾げてしまう。
「これってなに?」
「え?まさか気づいてないの?ちょっと自分の背中見てみなさい!」
「え?」
自分の背中など、どうやって見ればよいのだ。
クレアは四苦八苦しながらも正面の鏡を頼りにグイッと背中を覗きこんだ。
「え?何これ……」
全体は見れなかったが、半分ほど見ることが出来た自身の背後には、いくつもの赤い跡がついていた。いったいこれはなんなのだ。クレアはこの赤い跡の正体がわからず、大真面目な顔でフレイアに質問をする。
「何これフレイア、別に痛くも痒くもないんだけど…私、すぐに医務室行ったほうがいいのかなぁ?」
特に熱などの自覚症状はないが感染症の類なら兵団に迷惑をかけてしまう。
クレアは本気で不安になり、フレイアを見るが、彼女は途方に暮れたような呆れ顔でクレアを見つめていた。