第20章 愛しい奇行種
「なんだよ、意外か?」
「は、はい!意外でした…じゃあ、兵長、今まで恋人は…?」
「これも、言いたくはねぇが、お前が初めてだ。まぁ、身体だけの関係をもっただけなら過去にあるがな。」
「………………。」
「なんだ?頼りなくてがっかりしたか?」
「あ、あの、そんなんじゃないです。ちょっと思い出した事がありまして。」
「…なんだよ?」
クレアは自分の長い髪の毛を少しとると、指にクルクルと絡ませながら口を開いた。
「キンモクセイの花言葉は「初恋」なんです。私にとってはもちろんですが、兵長にとっても私が初めての恋人なら、嬉しい偶然です。」
「花言葉か。男の俺には初耳だったな。」
「そうですよね。それとあともう1つあって、それは……」
「なんだ、1つの花にまだあるのか?」
「あっ、いえ、そのはずだったのですが、ちょっとど忘れしてしまいました…」
──キンモクセイのもう1つの花言葉──
それは、過酷な調査兵団に所属する自分たちにはあまりにも非現実的で、軽々と口にできるものではなかった。
クレアはうっかりと口を滑らせてしまうところだったが寸での所でおさえた。
無理矢理誤魔化したがリヴァイには怪しまれてないだろうか。
チラリとリヴァイの方を見るが、あまり気にしてる様子はなさそうだ。花言葉など、内容が内容なだけに興味関心もそこまでなかったのだろう。
クレアは内心少しホッとした。
そんなこんなで時刻は昼過ぎだ。
休日とはいえリヴァイはこの後どうするのだろうか?
休みの日も仕事に追われている日が多く、手伝いを申し出ようとしたその時だった。
「キャアアア!」
急に浮遊感が襲ってきたと思ったら、リヴァイによって抱き上げられていた。
「兵長?あ、あの今日お仕事はされないんですか?私、お手伝いをしようと……」
──ドサッ──
今度はベッドに押し倒されリヴァイを見上げてしまっている。
「今日は仕事は無しだ…そんな気分ではない。」
「……兵長?」
「明日からお前は訓練再開。幹部もあと数日で通常訓練に戻る。そうしたら次またお前とゆっくり過ごせるのはいつになるかわからない。だから今日は仕事は無しだ。」
そう言うと、ゆっくりクレアにキスをした。