第20章 愛しい奇行種
「兵長こそ、こんな私で宜しいのでしょうか?」
クレアは少し気まずそうに目をそらしてしまった。
リヴァイが必死に生きてきた過去を思うと、途端に自分がいかに恵まれていた環境でありながらそれを理解していなかったかを、今になって思い知り恥ずかしくなってしまったのだ。
「ハッ、質問に質問で返すなんて、変なヤツだな……」
コイツの事だ。ボロクソになじるような事は言わないだろうとは思っていたが、まさか自分の生い立ちと比べて恥じてしまうなど、まったくの予想外であった。
「あ、すみません…私はどんな過去があっても兵長だけです……兵長はどうなんですか?私も、教えて欲しいです。」
「あぁ、俺もお前と同じだ。どんなにお前があのクソメガネに執心の奇行種でも、きっと嫌いになんてなれねぇんだろうな…」
クレアが少しはにかんで笑った。
リヴァイの心配は杞憂だったようだ。
「ところで兵長。私達は恋人同士になったのでしょうか?」
食事を終えて2人で食器を重ねて片付けている時に、クレアは突然よくわからない質問をしてきた。
「あ!なんだよいきなり。」
少なくともリヴァイは昨夜、想いと身体が重なった時点で、そう思っていたが、クレアは違うのだろうか?
「あ、ごめんなさい…えっと、私は兵長の恋人になれたと思っても良いのでしょうか?」
「……俺はそう思ってたが違うのか?」
「い、いえ…それならいいんです。ただ、恋人になれたと思ってたのが私だけだったらあまりにも恥ずかしいので、確認したかったんです。」
「ヤル事やっといて、確認も何もないだろ?」
「や、あ、あの、そうなのかもしれないですが、でも私、恋をするのなんて初めてで…そういうものなんですね。」
クレアはモジモジと俯いてしまう。
「いや、そういうもんかどうかは正直俺にもわからねぇが……」
「……え?」
「あまり言いたくはないが、俺が好きになった女はお前が初めてだ。だから悪いが恋人とは何かと聞かれてもうまく教えられる自信がねぇ。」
「………………………!!」
そういうと、リヴァイは重ねた食器とトレーをトンっとテーブルの隅に置いた。