第20章 愛しい奇行種
「いただきます!」
昨日のレストランの食事のメニューとは雲泥の差だが、リヴァイと一緒に食べられるのならクレアはなんでもよかった。
雨の音を聞きながら静かに進んでいく昼食。
普段執務室でも何も話さず仕事をする事もよくあるため、クレアは特に沈黙が気まずい事はなかった。
しかし、一緒に食事など、今度いつできるのかわからないのだ。せっかくだから何か話をしようと思ったその時だった。
「なぁ、クレア。ちょっといいか?」
口を開いたのはリヴァイだった。
「は、はい。なんでしょう?」
「昨日のお前の気持ちは嬉しかった。だからこそお前に話しておかなくちゃならない事があってな。」
「??」
クレアはなんのことかわからず首を傾げるだけだ。
「俺が地下街の娼婦の子供だってのは話したよな。俺の過去はそれだけじゃねぇ。エルヴィンに捕まるまでは、生きてくために沢山の人間を殺した。金の為ならどんな依頼も受けた。殺した人間の数なんて覚えちゃいねぇ。自分と仲間を守るのに必死だったからな。……なんだか事後報告みたいになっちまったが、お前が選ぶ男はそんなんでもいいのか?」
「…………。」
わざわざこんな事、今言う事ではないのかもしれないが、自分の汚れた手を知ってる人間が多かれ少かれ調査兵団にはいるのだ。となれば、他の者から聞かされるよりは自分から話してしまったほうが幾分か心持ちはいい。リヴァイはなるべく表情を変えずクレアの反応を伺った。
「あの、兵長のお仲間は今どちらに……」
「一緒に調査兵団に連れてこられたが、壁外調査で死んだ。しかも、俺のミスでだ。」
何か考え込んでる様子を見せたが出てきた言葉は全くリヴァイの予想を反するものだった。
「……兵長は、本当に、必死に必死に生きてこられたんですね…お仲間の為に自らの手まで汚されて……人殺しを肯定することはできませんが……私に兵長の生きてきた道に口を出す権利はございません。」
「………………。」
「私は、過酷な訓練とハンジさんに出会うまでは、毎日がただただ退屈で、生きる目標もなく冷めた子供でした。医者の1人娘で特に不自由することもなくのうのうと暮らしてたんだと思います。兵長が生きるために必死に守ってきたものを考えると、私は自分の生い立ちが恥ずかしくてなりません……」