第20章 愛しい奇行種
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毛布にくるまりながら、リヴァイが出ていってしまった扉を見つめると、クレアは昨日の事を思い出していた。
リヴァイも自分と同じ気持ちでいただなんて、嬉しいが、今だに信じられない。
それに、お互いに好きだからといって、あんなにも性急に事が進むなんて思ってもみなかった。
普通は気持ちが繋がって、デートを重ねて、手を繋いで、抱きしめて、キスをして……
恋人というのはそんな風にゆっくりとお互いの気持ちを育むものだと、クレアは勝手に思い込んでいた。
きっと、昨夜の自分はどうかしていた。
チャンスは昨日しかないと、意気込んで出かけたものの、結局はリヴァイが好きだというたったそれだけの言葉すら緊張が邪魔をしてでてこなかった。
しかし、雨が降り出したと思ったら大雨になり、嵐へと変わり雷鳴が轟くと、もう自分のずぶ濡れになった身体の中身を占めるものはリヴァイの事のみだった。
そこでタイミングが良かったのか悪かったのか、自分の背後で大きな落雷が起こり、頭の中の本能の様なものが突き動かされると、あとは考えるよりも先に身体が動いていた。
どんなに恥ずかしくても、痛くても、リヴァイを求めることを止められなかった。
冷静に考えれば、性体験の無い自分がなんて大胆なことをしてしまったのだろうかと、今になって驚いているくらいだ。
それ程までに昨日の嵐と落雷は、まごついていた自分の目を覚まさせるのに一役買ってくれたのだろうか……
自分の唇が、首筋が、胸元が、下半身が……リヴァイが触れたところ全てが、昨夜の事を覚えている。
痛みはもうなかった。
今残っているのはリヴァイがでていく前に交わした情事の快感の余韻だ。
思い出すと急に恥ずかしくなってしまい、ベッドでジタバタともがいてしまう。
「本当に…本当に…兵長としちゃったんだ…」
昨夜と今朝の営みを思い出してしまい、一気に顔が蒸気を上げるのがわかる。
「どうしよう…兵長のこと…本当に…好き…」
誰にも聞こえるはず無いのに、呟いてしまうと言った自分に恥ずかしくなり、仰向けに枕を抱きしめ、またもジタバタと暴れだしてしまう。
しかしその時だった……
──カチャ──
「どうした奇行種…腹が減って頭でもおかしくなったか?」