第20章 愛しい奇行種
うつ伏せに倒れているクレアの背中を拭いてやると、リヴァイは自身の衣服を整えてベッドから降りた。
「ほら、時計だ。何時か知りたかったんだろう?」
リヴァイは悪い笑みを見せながら時計をベッドにむけてやった。
「…時間なんて、もう何時でもいいです…」
「フッ、そうかよ。」
拗ねたクレアは毛布を引っ張るとごろごろと転がり自分の身体に巻き付けた。
しかし、チラッと時計をのぞけばそろそろ正午だった。今しがたいたした情事の時間を除いてもだいぶ眠っていたようだ。
「おい、すぐに戻るからそんな格好で部屋を出るんじゃねぇぞ?」
「…え?兵長どこに…?」
──パタン──
リヴァイはクレアの言葉を聞く前に部屋を出ていってしまった。
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リヴァイはクレアと部屋で昼食をとろうと食堂まで来ていたのだが、2人分の食事のトレーを器用に2段に重ねて食堂を出たところで、ある人物に声をかけられた。
「リッヴァーーーーーイ!!」
顔を見なくてもわかる。
今1番会いたくないヤツだ。
さて、両手の塞がったこの状況でどうやって撃退するか…と考えたが、リヴァイはこの声の主に言わなくてはならない苦情を思い出し、即撃退の案は一度引っ込めることにした。
「なんだよ、クソメガネ。」
リヴァイに声をかけたのはハンジだった。
後ろには徹夜明けと容易に想像できるモブリットの姿もあった。
ハンジはニコニコとこの上ない笑顔を向けながら手を振りリヴァイの前までやってきた。
「リヴァーイ、やっと部屋から出てきたね……って?!えぇぇぇぇぇぇぇ!いってぇぇぇぇぇぇ!」
リヴァイは話も聞かずにハンジのつま先の小指あたりをグリグリと踏みつけた。
否、踏みにじったようだ。力の入れやすいかかとの部分を使って踏みにじっている。
「昨日はよくも適当な天気予報を教えてくれたな。おかげで俺もクレアもえらい目にあった。これはその礼だ。ありがたく受け取れ!」
「アハハ!ずぶ濡れだったかな?でも何度も言うようだけど、いい天気だったと思うんだけどなぁ〜。」
「あぁ?!どういう了見だクソメガネ。」
2人の会話を聞いてるモブリットがどこで仲裁に入ろうかうろたえ始めてしまった。