第20章 愛しい奇行種
決して失えないものを手にしてしまったと悲観するのはただの現実逃避だ。失えないのであれば、何に変えても守ればいい。
ただそれだけだ。
そのための選択、今回は絶対に間違えたりはしない。
それに、先の未来を絶望なんかしたって何も始まらない。絶望なんて誰でもできる。言ってしまえば絶望くらい死人にだってできる。
クレアに対して芽生えた感情に後悔はしていない。
どんなに脆くて儚いものであろうとこの腕の中の存在を愛さずにはいられないのだ。
なら自分にできるのは選択を間違えずに進む事のみ。
少しずつ正気に戻ってきたリヴァイにキンモクセイの香りは更に背中を押す。
─その想い誠であるなら愛しぬいてみせよ─
と。
当たり前だ……
クレアへの想いを今一度キンモクセイの香りに誓うと、リヴァイは再び目を閉じ眠りの世界へと入っていった。
ぐっすりと眠ったはずであるのに、クレアを抱きしめていると、不思議なほどすんなりと眠ることができた。
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「……………………。」
リヴァイが再び目を覚ますと、時計は10時をまわろうとしていた。かわらずクレアは気持ち良さそうに寝息をたてている。
コイツはいったいいつまで寝てるつもりだ…
目を覚ます様子のないクレアに少し呆れるが、いい加減起きるだろう。
リヴァイはベッドからでると、クローゼットから私服を出し着替え始めた。
着替えが終わる頃、布団の中で丸まっている人物がモゾモゾと動き出す。
「…………ん。」
「やっと起きたか?」
気怠そうに身体を起こすと、ペタンと座り無言で目をゴシゴシと擦っている。
こんな寝坊をする様子など、毎日欠かさず早起きをしてくるクレアからはとても想像できない姿だった。
「あ……兵長。おはようございます。あれ、今何時ですか?」
クレアはサイドテーブルに置かれた時計を見ようとしたが、時刻を確認する前にくるっと時計をひっくり返されてしまった。
「何時かなんて気にしなくていい。」
そんなことを言われてしまったが、なんとなく目覚めた感じから、物凄く寝坊をしてしまった様な気がする。悪天候の外の様子からでは時刻の予想もできない。クレアはどうしても時計が見たかった。