第19章 大雨と雷鳴とハンジ班の奇行種
初めての情事が出血を伴う可能性があることくらい、そこそこの年齢になれば誰もが知っている事だろう。
ことにクレアは医者の娘だ。興味など無かったかもしれないが、知識としては知っていてもおかしくはないように思える。
自他共に認める潔癖症のリヴァイであったが、こんな事は当たり前すぎて、どうこう言う問題ではなかった。
シーツ1枚でそんなに気にするくらいなら、頭突きの件を謝罪してもらいたいと思ったが、この様子から察するに、これ以上傷口に塩を塗ることは出来なかった。
リヴァイは腰掛けたまま両手を握ってやると、クレアを見上げた。
下着を着けずにシャツ1枚だと、胸の先端がわずかに透けて見え、男の興奮を煽ってしまうからやっかいだ。リヴァイの下半身は再び熱を再燃させそうになるが、今夜はもう無理をさせるわけにはいかない。そう自身に言い聞かせ、熱を帯び始めたソレを必死に鎮めた。
「何度も言うが、シーツの事は気にするな。」
「……………はい。」
そのまま握った手を引くと、リヴァイはクレアに深いキスをする。
「ん……ん…」
角度を変えながら何度も深くキスをする。
「今夜はこのまま泊まっていけ。」
「…え?いいんですか?」
「当たり前だろ、そんな格好で兵舎をうろつかれても困るし、それよりも…俺がお前を返したくない。」
「兵長……」
「ほら、ベッドに入れ。今日はもう寝るぞ。」
クレアを壁側に寝かすと、毛布と布団をかけてやり、自身も横になった。
クレアを後ろから抱きしめると、シャワーを浴びてきたはずなのに首元からキンモクセイの香りがした。
「わざわざ香油を持ち歩いてたのか?」
クレアはリヴァイの言葉に、うなじにぬった香油の事を思い出した。
「あ、違うんです…香油屋のご夫婦からの御好意で、固形の香油を頂いたんです。これは入浴してもしばらくは香りが続くそうで…今日初めて使ってみたのですが…」
さすがに恋のおまじないが込められているからと貰って、つけて来たなど恥ずかしくて言えるわけがなかった。
「……悪くない。いいもの貰ったじゃねぇか。」
リヴァイは深く追求はしなかったが、強く抱きしめ直すと、首元の香りを深く吸い上げた。