第19章 大雨と雷鳴とハンジ班の奇行種
「そうか…それなら俺が教えた様にお前も教えろ…お前の言う好きとは何だ?まさかクソメガネに対する好きと一緒か?」
……そんなはずない。
……そんなはずなどない。
しかし、今しがた渾身の勇気を振り絞って好きだと伝えたばかりだ。
これ以上なんと言えばいいのだ。クレアの心臓は恥ずかしさと焦りでドクドクとうるさく拍動している。
しかし、クレアは想いを伝えると決心したのだ。
もうなりふり構ってはいられない。
「おい、答えてはくれないのかよ……」
少し焦れてるリヴァイの胸にドンッと顔をうずめると、絞り出す様な声でクレアは答えた。
「ハンジさんは敬愛という種類の好きです…ですが…兵長のは違います……兵長の事は…恋という感情の好きです…」
その言葉を聞くと、リヴァイはホッと安堵したようにクレアを抱きしめた。
「おい、お前はいつから俺の事が好きだったんだ?」
「え?えっと…はっきりと自分の気持ちを自覚したのは初めての壁外調査の前日に一緒に星を見た時です…」
ほんの興味本位で聞いた質問だったが、偶然にも好きだと自覚したタイミングは一緒であった。
自分達は3ヶ月以上もモタモタと遠回りをしていたのかと思うとため息が漏れてしまうが、やっと想いが繋がったのだから良しとしよう。
ずいぶんと遠回りをしてしまったが、今日からクレアは名実ともに自分のものになったのだから文句はない。
繫がった想いに一安心したのかクレアの肩がブルっと震えた。無理もない…この大雨のなか走ってきてずぶ濡れだ。
2人の足元にも大きな水溜りができてしまっている。
「こっちにこい…」
リヴァイはベッドサイドまで連れていくと、棚からバスタオルを持ってきてクレアの長い髪を拭いてやった。頭にバサッとタオルをかけガシガシと拭いている。
「あ、すみません…」
拭いてもらっている立場から言うのも失礼だが、この間医務室でしてもらった時とだいぶ力加減が異なった。
どうしたのだろうかと思った瞬間、リヴァイはクレアの首元のケープの紐をほどくと、そのまま背中に手をまわし、ワンピースのファスナーを素早くおろしてしまった。
「…兵長?!」
水分を含んだケープはドサッと床に落ち、ファスナーを下ろされたワンピースからは肩がはだけてしまっている。