第4章 懇願
──数日後、訓練兵団──
クレアが朝食をとっていると、1人の訓練兵が声をかけた。
「クレア、ちょっといい?」
顔をみると、同室の訓練兵だ。
「なに?」
「キース教官が、朝食が済んだら訓練前に執務室に来るようにって。」
「………っ!?」
カチャン!!
クレアは持っていたスプーンをテーブルに落としてしまった。
「何かやらかしたの?」
その訓練兵はニヤニヤと興味津々に聞いてきた。
「ううん、そんなことないよ……ありがとう!すぐ行くから!」
そう言うとクレアは席を立ち、朝食ののったトレーを持ち上げるとさっと片付け食堂を後にした。
キース教官からの話……
聞かなくても想像はついた。
おそらく退団命令だろう。
あそこまで派手にしつこく暴れたのだ。今の今まで退団命令がでなかったのが不思議なくらいだ。
卒業まであと3ヶ月、まだまだ訓練にうちこみたかったが仕方ない。潮時なのだろう。
ハンジ班で調査兵団に入れなければ、憲兵も駐屯兵も嫌だ。
今後は街で就職先を探して納税者としてほそぼそと暮らすのか。
一気に気が重くなり、キース教官の執務室までの道のりがやけに長く感じた。
執務室の前で大きく溜め息をついてからノックをした。
コンコン!
「クレア・トートです。」
「入れ。」
クレアは一礼してから敬礼をする。
「キース教官!長きにわたりご無礼大変失礼しました!今まで大変お世話に…………」
「おい!」
最後くらいきちんと詫びてから出ていこうと思ったのだが、全て言い終わる前に教官によって遮られてしまった。
「お前に、調査兵団からハンジ班での特別入団の許可がおりた。」
「……………………!」
え?!今なんて?!
「なんだ、今更憲兵にでも行きたくなったのか?」
「い、いえ、そんなことはありません。ですが、私はてっきり退団命令がでているものかと……」
「まぁ、通常ならお前のあの問題発言は即退団命令だがな。調査兵団も人員不足だ、有能な兵士は1人でも欲しいらしい。今までの真面目な訓練態度も評価にいれての特別待遇だ。それにお前がおかしくなったのもハンジの講義があってからだ、その責任もとって引き取ると言ってきている。」