第19章 大雨と雷鳴とハンジ班の奇行種
クレアの滑らかな髪は、細い絹糸の様に柔らかくて繊細だ。この濡れていてもスルスルと指をすり抜けていく心地良い感触を知っているのは自分だけでいい……
このクレアの髪の毛1本に至るまで他の男に触れさせたくはない……
リヴァイが腹をくくったその時だった。
「……兵長あの…私…」
沈黙を破って先に口を開いたのはクレアだった。
「ダメだ。先に話をするのは俺だ…」
間髪入れずにリヴァイはクレアの言葉を遮る。
「……………え?」
今がチャンスかと勇気を振り絞ったが、まさかのリヴァイによって出鼻をくじかれてしまった。
そもそもリヴァイは自分に何の話があるというのか。
「いいか、一度しか言わねぇからよく聞けよ……」
クレアの蒼い瞳は不安げにリヴァイを見つめた。
「……クレア……俺は、お前のことが好きだ……」
「…………」
予想もしていなかったリヴァイの言葉にクレアは一瞬にして全ての五感と思考がストップしてしまった。
その反応をリヴァイがどうとらえたのかは不明であるが、おそらくは、奇行種クレアが何か勘違いをおこしたのかと思ったのだろう。
「おい、ちゃんと聞いていたか?なんとか言えよ…」
「あ、あの…その…」
自分が言おうと思っていた事を先に言われてしまったことで返答にまごついてしまう。
「ちゃんと意味はわかっているのか…?俺が今言った好きの意味はこういう事だ……」
すると、リヴァイはクレアの両頬を包んで上を向かせると、少し強引に唇を重ねた。
「!!!」
逃げることが出来ないように頬に添えた手をそのまま後頭部までスライドさせると、リヴァイは舌を使い、更に深く口付けた。
「んん!!」
まさかの事態にクレアの頭の中はパニック状態だった。
リヴァイが自分を好きだと言った。好きの意味はこういう事だと言ったところでいきなり唇を奪われた。
どうすることもできなかったが、リヴァイも自分と同じ気持ちでいてくれたと解釈してもいいのだろうか?
初めて経験する口付けは、戸惑いながらも心地よく、身体の奥が疼くような不思議な感覚になった。
心なしか、足元に力が入らない。
クレアはリヴァイの二の腕のあたりをしがみつく様にグッと掴んだ。