第19章 大雨と雷鳴とハンジ班の奇行種
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ハンジの執務室では、滞りなく精製作業が進められていたが、やっとリヴァイが動き出したせいだろうか…今宵のハンジは気持ちが悪いほど機嫌がいい。雨の打ち付ける窓の方をしきりに見つめてはいい天気だと言っている。
「分隊長、気持ちは分からなくないですが、この天気です。いったいどこがいい天気なのでしょうか?」
「ハハハ!頭が固いなぁモブリット!私は風呂に行ってくるから戻るまでここ頼んだよ!!」
すると、ハンジは着替えの兵服と、洗面道具の入ったバックをモブリットに見せつけた。
「えぇ?!分隊長が自ら大浴場にいくなんていったいどうしたんですか?まさか!熱でも出ましたか?!」
「失礼だなぁ。熱なんかないよ!可愛いクレアと大事な友人の記念すべき日になるかもしれないからね!アレだよアレ!禊だ禊!」
「………??」
いったい何を言ってるんだと言いたげなモブリットを軽くスルーすると、ハンジは大浴場へと向かっていった。
大浴場に着くと、ちょうどフレイアが風呂を済ませて出てきたようで、声をかけられた。
「あっ!ハンジ分隊長!お疲れ様です!!まさかお風呂にはいりにきたんですか?え?お一人でですか?」
ハンジの風呂嫌いは兵団内でも有名なため、例外なくフレイアも驚いて見せた。
「もう、みんなひどいなぁ。今日はね、特別ないい日になりそうでね。身を清めようと思ったのさ。あっ、そうそう!今日はクレア部屋には戻らないとおもうからねー!」
「え?ハンジさんの執務室にお泊まりですか?」
わけが分からず質問をしたが、すでにハンジは中に入って行ってしまい、返事は返ってこなかった。
テラテラになった髪を洗髪し、身体を洗って浴槽につかると、ハンジは湯の中で思いっきり伸びをした。
ハンジの天気予報の的中率は4〜5割といったところだ。今朝の様子からして雨になりそうだとは思ったがここまでの嵐になるとは予想外だった。
それでもこれは、嬉しい予想外だ。
この雨ならレストランで傘を借りれてもずぶ濡れであろう。また、傘を持たずに店を出ていたならそれ以上に好都合なことはない。
こじれにこじれて遠回りをしてきた2人だ。
お互い冷たい雨で頭と体の芯まで冷やしてしまえばいい。冷え切って冷静になれば、求め合うものなど1つしかないのだから。