第18章 奇行種、リヴァイとディナー
店を出ると、そこまで寒くはないが、少し冷たい空気が鼻をツンとさせた。
すっかり暗くなった夜道を並んで歩いていると、クレアはある事に気がつく。
「兵長?兵舎はこっちですよ?」
来た道とは違う道を行こうとするリヴァイを不思議に思ったクレアは思わず声をかけた。
「いや、こっちでいい。酔い覚ましだ。」
「え?兵長酔ってるんですか?」
「ちげぇよ奇行種。酔い覚ましはお前のほうだ。弱い酒とはいえ結構飲んでたからな。兵舎に戻ってからこの間みたいにはしゃがれて、また巨人を食わされたらたまったもんじゃねぇからな。」
「そ、そうですよね…」
意地悪な笑みを浮かべるリヴァイに返す言葉もなかった。実際、頭はハッキリしているが、足元が若干浮いた感じがする。決して変なテンションではないが、この状態に少しばかし心地よさもあるため、これが俗に言う「ほろ酔い状態」なのだろう。
リヴァイの言うとおり、散歩をして酔いを覚ましてから帰るのが1番だ。
それに、少しでもリヴァイと一緒にいたい。
そして、リヴァイに伝えたいこともある。
兵舎の外でリヴァイと2人きりになれる機会など、もう二度とこないだろう。クレアはこのほろ酔いが覚めるまでの間に、どうしても気持ちを伝える決心をつけたかった。
しばらく夜道を歩くと、小さな公園が見えてきた。
リヴァイは何の迷いもなく暗い公園に入っていくと、ベンチに腰掛けた。
そして、視線で「隣に座れ」と言っている。
クレアは黙ってリヴァイの隣に腰掛けた。
「兵長…今日は本当にありがとうございました。こんな素敵な服まで頂いてしまって…実は私、服の仕立て直しのやり方を、母から教わる前に亡くしてしまったので、今まで自分では直すことができなかったんです。でもいい加減勉強しないといけないですね…さすがに雑巾はこたえました。」
クレアははにかむように笑った。
仕立て直しの勉強などしなくたっていい。
服なんか、自分が必要な分だけ買ってやる。
リヴァイは喉元までそう言いかけた。
「雑巾はこたえたかよ…そりゃ悪かったな…」
ぶっきらぼうな返事であるのに、何故だが表情は柔らかく、返す言葉にも優しさを感じる。
そんなリヴァイが好きだと想う気持ちがどんどん大きくなる。
クレアの心臓はうるさく騒ぎ立てた。