第18章 奇行種、リヴァイとディナー
─カタン─
「ご、ごちそうさまでした…」
クレアはナイフとフォークを皿に置くが、握ったまま天井のシャンデリアを見つめていた。
紅茶を飲み終えたリヴァイは、膝にかけてあったナプキンをテーブルに置き自身の向かいを見ると、そこには満腹になって満足したと容易に想像できる表情のクレアがいた。
「結局3個目も残さず食ったか…たいした奇行種だな。」
酒のせいもあるだろうが、目をトロンさせ、少しほうけた表情のクレアは、リヴァイが初めて見る姿であった。その様子は男からしてみれば、完全に「隙だらけ」な状態だ。
やはりクレアは自分のいない所では酒を飲んではいけない。リヴァイは改めてそう感じたようだった。
食欲、性欲、睡眠欲は人間の3大欲求だという。
今はその中の食欲が満たされた状態であるのは見ての通りだが、あろうことかリヴァイは、クレアの性欲が満たされた時もこんな顔をするのだろうかと、ついつい余計な事を妄想してしまった。
頭の中で考ている事は他人にはわからない。何を考え妄想しようと自由。それはそれで大きなメリットであるが、逆を返せば、誰にも見られないが故に、思考や妄想が止めようと思っても止まらない時がある。
それはそれで最大のデメリットだ。
今のリヴァイは情欲が満たされたクレアの姿を妄想しだしてしまい、まさに最大のデメリットにはまる寸前だったが、タイミング良くキャッシュトレーを持ってきた店員に話しかけられ、強制的にブレーキをかけることができた。
財布を出し言われた金額を置く。
少しほうけていたクレアもそこで、ハッと我に返ったが、ここはリヴァイが自分のために用意してくれた席であったため、会計に口をだすのは失礼だろう。
クレアは店を出てから改めて礼を言うことにした。
「ありがとうございました!またのお越しをお待ちしております!」
「あ、あの!兵長…本当にご馳走になってしまってよろしいのでしょうか?」
「なんだよ、全快祝いと副官代理の礼だと今朝言っただろう。当たり前だ。」
「あ、ありがとうございます!本当に…ご馳走様でした!」
今日見る2度目の笑顔もリヴァイからしてみれば、破壊力抜群の笑顔だった。それは、日頃ハンジに向けている笑顔より眩しいのではないかと自惚れてしまいたくなるほどにだった。