第18章 奇行種、リヴァイとディナー
さて、クレアが笑顔に戻る話は何かないかとリヴァイは考える。
「……お前はダスゲニーが元々は暴れ馬だって知っていたか?」
「えぇ?なんですか?知りません!!」
クレアは訓練兵団では、馬くらいしか話し相手がいなさそうな根暗なヤツだった。
馬の話でもしてやれば気が変わるかと思ったが、予想以上の食いつきを見せてくれた。そんなクレアに一安心すると、リヴァイは自身とダスゲニーの馴れ初めを話してやった。
「…そんなエピソードがあったとは…驚きです。騎乗訓練では兵長の先を読んで自らの判断で動いてるので、暴れ馬な時代があったとは意外でした。」
「だろ…昔の悪い癖が出るのか、時々オルオの髪をムシってる事があるがな…」
お互いの話をしながら食事が終わると、ちょうどタイミング良くデザートがでてきた。
リヴァイは紅茶のみ。
クレアには木苺のタルトと紅茶が出された。
「お待たせしました。こちらはデザートの木苺のタルトでございます。」
「…………」
「どうした?好みじゃなかったか?」
黙ったまま食べようとしないクレアを不思議に思い、リヴァイは問いかけた。
「兵長、わ、わ、私…タルトが…特にベリーが乗ってるタルトが…大好きなんです…」
なんだよ…嫌いな訳じゃないのかよ…
思わず心の中で突っ込んでしまう。
「ほう、それはよかったな…」
「兵長は召し上がらないんですか?」
「俺は甘いものは苦手だから紅茶で十分だ。それはお前の分だ。」
「こんな贅沢を、宜しいんでしょうか…」
感動で打ち震えてるのか、ナイフとフォークを持ったままなかなか食べようとしない。
「おい、食わねぇのかよ。」
「なんか…もったいなくて…」
「…呆れたヤツだな。追加で頼んでやるから食っちまえよ。」
「えぇ?いいんですか?!」
「あぁ、好きなだけ食ってけ…」
「嬉しいです!頂きます!」
資金事情の厳しい調査兵団の食堂では、肉などはめったに食べることができない。
そんな生活をしているにも関わらず、デザートのタルトにテンションを上げるとは。
女は甘いものが好きだと言うが、リヴァイには到底理解できるものではなかった。
結局クレアは同じタルトを2回追加で注文をした。
さすがにそれで満足したようだった。