第18章 奇行種、リヴァイとディナー
「どういうことだ?」
「内地での手術が成功すれば、報酬も高かった様です……ですが、父のポリシーだったのか、生活が苦しい人への診療はほとんどお金をとっていなかったみたいなので……貧乏こそしませんでしたが、裕福でもなかったです。」
「そうだったのか……」
「それに、父は外科専門でした。なので、内科の治療が必要な患者さんは、よく親しくしていた先生の所へ紹介していたみたいです。その先生は昔、シガンシナ区で流行病が蔓延した時、見事に治療法を発見した優秀な先生だったそうで、イェーガー先生という方でした。いくつか年下のお子さんもいらっしゃったのですが…超大型巨人の襲撃で、安否は不明なままで…」
「外科専門か…だからお前の縫合は神業だと医師が言っていたのか…」
「え?先生がそんな事を言ってたんですか?確かに、私は一人っ子だったので、跡を継がせる為に父から色々と仕込まれましたが…」
「あぁ、医務室の助手に転職してもらいたいと言っていたぞ。」
「本当ですか?じゃあ仮に私が調査兵をクビになったとしても、働き口はあるということですね。フフフ。」
冗談っぽく笑うクレアの頬は少し紅く染まっていた。もうこれ以上飲ませるのはやめておこう。
リヴァイはクレアの話を聞きながらもきちんと飲酒量もチェックしていた。
「あ、自分の話ばかりすみません…私、兵長の事も知りたいです…兵長はどちらのご出身なんですか?」
「……俺の話など聞いてもつまらんぞ。俺は地下街の出身で母親は娼婦だったが、ガキの時に病気で死んだんだ。父親は客の誰かだから顔も名前も知らない。母親も名前しか覚えていないから俺は姓がわからないんだ。」
そう、入団した時、リヴァイだけはフルネームで紹介されていなかった。そんな事情があったとは思ってもみなかったクレアはまずいことを聞いてしまったと少し後悔した。
「あ、すみません……私、失礼なことを…」
「いや、地下街出身の事はだいたいのやつらが知っている。盗んだ立体機動装置でゴロツキをやっていた頃にエルヴィンから引っ張られるように調査兵団に入ったんだ。周知のことだから気にするな。」
そうは言ったものの、やはりクレアは少し気まずそうにしている。まぁ上官からこんな話をされてしまえば当然の反応だろう。