第18章 奇行種、リヴァイとディナー
「そりゃよかったな…」
喜ぶクレアの顔が見れてリヴァイも満足げだ。
美味しいシャンパンを堪能しているうちに、次々に料理が運ばれてきた。
リヴァイの注文した料理は、小さなキューブ状になったチーズがふんだんに使われたサラダや、濃厚なコーンスープ、鶏肉の香草焼きなど、絶対に兵舎の食堂では食べられないものばかりであった。
「い、いただきます!」
お、おいしそう…!!
目の前の料理に興奮寸前だが、はしゃぐ気持ちをなんとか押さえ、クレアは行儀良く食事を進めていく。
コース料理では無いため、あまりマナーを気にせず食べれる店を選んだリヴァイであったが、クレアは、高級店のフルコースに連れて行っても問題ない程にテーブルマナーがきちんと身についていた。
いつも食事にがっついている若い男兵士とは大違いだ。
クレアには、紅茶の入れ方や言葉遣い、所作、掃除に至るまで、色んな教養が身についてる。母親が貴族の給仕をしていたと言っていたが、リヴァイは1つひっかかっていた。
「お前の母親は内地で貴族の給仕をしていたと言っていたな?父親は医者と言っていたが、なぜ内地ではなくシガンシナ区に住んでいたんだ?」
リヴァイの疑問ももっともだった。
「あ、確かにおかしく感じますよね…あの、私の父と母はもともとシガンシナ区の産まれなんです。父は祖父の代からシガンシナ区で外科医として開業していたんですけど、母親の両親は早くに他界したそうで…路頭に迷ったときに運良く内地での住み込みの給仕の仕事にありつけて、母はそこでしばらく働くことになりました。」
「………」
「ですが、祖父も父も特殊な外科処置や手術を専門としていたため、評判を聞きつけた内地の貴族からよく手術の依頼を受けて貴族の屋敷を出入りしていたそうなんです。」
「それでお前の母親と出会ったって事か?」
「はい、もともと母もシガンシナ区出身だったので、父との結婚の話しが出た時には、仕事を辞めて戻ることを希望したと言っておりました。」
「そうだったのか。内地の貴族相手の診療じゃ、さぞお前の家は裕福だったんじゃないのか?」
「そう思いますよね…でもそうでもなかったんですよ。」
クレアは、少し呆れたように、でも懐かしむように父親の事を語り始めた。