第17章 奇行種、副官代理
リヴァイは紅茶を飲み、新聞を読みながらクレアが戻ってくるのを待っていた。
いい茶葉を使ってはいるが、クレアの淹れる紅茶と比べるとたいして美味くはない。
新聞に目を通していても、時折してくれるクレアの例え話や破天荒な行動のように面白くはない。非常に退屈だ。
早く戻ってきてくれ…
少し待っている事に飽きてきた頃、ようやく店の奥からクレアのと思われる足音が聞こえてきた。
……やっときたか?
新聞に目を落としたまま耳を澄ませていたが、その足音は遠慮がちで中々こちらに来ようとしない。
「あ、あのお客様?リヴァイ様はあちらでお待ちですよ?」
何やら店員に促されている。
いったいどうしたんだ。
リヴァイが立ち上がってクレアの方を見ようとすると、クレアはさっと、身を隠すように店員の後ろに引っ込んでしまった。
「へ、兵長!!ちょっと待って下さい!なんか、恥ずかしいです!心の準備が!」
フォーマルドレスではないが、今着ているワンピースも地味なデザインとて上等に仕立てられているものには変わりない。
訓練兵団には着の身着のまま入団して、ここ数年服を新調などしていないのだ。
こんな格好をするのも久しぶりすぎて、リヴァイの前までくると思わず緊張してしまい店員の後ろに隠れてしまった。
「あ?!なんだよ奇行種。さっき着てた雑巾の方がよっぽど恥ずかしいだろ…さっさとでてこい……」
焦れたリヴァイはクレアの手を取るとグイッと引っ張り自分の前に立たせたが、予想をはるかにこえたクレアの姿に、思わず息をのんでしまった。
「!!」
茶色一色の地味なワンピースであるが、控えめな総レースで仕立てられており、とても上品なデザインだ。
色白で蜂蜜色の長い髪のクレアによく似合っている。クレアは、黙って座ってれば貴族の令嬢といっても過言ではない程の変身ぶりだった。
「あ、あの……やっぱり変でしょうか?」
一瞬黙ってしまったリヴァイの反応が気になりクレアが不安げに口を開く。
「いや、悪くねぇ。雑巾よりよっぽどましだ。」
期待以上の出来栄えに満足すると、リヴァイは満足げに口角を上げた。
「ありがとうございます……」
リヴァイの反応にひとまず安心するが、クレアの不安はもう1つ残っていた。