第17章 奇行種、副官代理
さて、どんな変身を遂げて自分の前に現れてくれるのかと、リヴァイは顔には出さなかったが内心楽しみだった。
それをまわりに悟られぬ様、テーブルに置かれた新聞を手に取ると、あまり興味の無い記事だったが仕方ない。リヴァイはそれを読みながらクレアを待つことにした。
「こちらなんかいかがでしょうか?」
店員がクレアに勧めたのは真紅のベルベット生地のワンピースだった。胸元は少しあいていてサテンのベルトリボンまでついている。
確かに美しい品物だが、いきなり胸のあいた真紅のワンピースなど、ハードルが高すぎてとても無理だ。
クレアは丁重に断った。
「とっても素敵なのですが…私にはもったいないです…もっと地味な色とデザインの物はありますか?」
「そうですか…お客様の御肌や御髪の色合いに真紅はぴったりなんですけど……少々お待ちくださいね。」
店員は選び直すと、今度は茶色のワンピースと、薄手のケープを持ってきた。
「こちらはいかがでしょうか?」
今度は詰め襟の総レースの膝丈ワンピースだった。
胸元には金の飾りボタンが付いている。
レースの模様も控えめで、そこまでフォーマルではないので、今履いているショートブーツにもぴったりだった。
これなら自分がきてもおかしくないだろう。
「では……これにします。」
「かしこまりました。ではお直ししますので、試着室へどうぞ。」
試着室で着てみると、やはり1番小さいサイズでもクレアには若干大きかった。
「とてもよくお似合いですよ。」
「あ、ありがとうございます。こんな体型なので、自分に合った服を持ってなくて…」
「ご安心を!すぐにお直ししますのでお待ちくださいね。」
クレアは店のガウンを羽織ると、試着室の中に置かれた椅子に座り仕上がるのを待った。
腕のいい仕立て屋なのだろう。サイズ直しされたワンピースはほんの15分程ででてきた。
「ケープの方はサイズ大丈夫そうですね。」
仕上がったワンピースの上から上着のケープをかけてもらうとクレアは自分で首元の紐を結んだ。
一応鏡を見て確認するが、そこまでおかしくはないだろう。
「よくお似合いですよ!さ、リヴァイ様の所へご案内致します。」
リヴァイは何と言うだろうか…クレアの胸は不安でいっぱいだった。