第17章 奇行種、副官代理
「あ、あの…支払いは月賦でもいいですか?」
クレアはコソッと申し訳なさそうに店員に聞いた。
そう、クレアが不安に思っていたのは支払いのことであった。
リヴァイが利用している仕立て屋である為、値段を気にしながら選ぶのは店員に失礼だと思ったのと同時に、リヴァイに恥をかかせるかもしれない。
そう考えたらもうこうするしか方法が思い浮かばなかった。
しかし店員はニコリと笑顔を見せると、会計のカウンターの方に手のひらを向けている。
「ご心配には及ばないみたいですよ。」
「え?」
クレアが会計カウンターに目をやると、リヴァイは今まさに支払いをしようとしていた。
「あ!兵長!いけません!私が……」
「何言ってやがる、俺は薄給の新兵に支払わせるようなクソじゃねぇよ。」
慌てて支払いを変わろうとするが、思い切り断られてしまった。しかし、見るからにこんな高価な物を、はいそうですかと受け取れる訳もなく困惑していると…
「はぁ…上官命令だ。それならいいだろ。」
上官命令。
末端の新兵であるクレアはこう言われてしまうと、何も返せない。
そう言うと、リヴァイはさっさと会計を済ませてしまった。結局いくらだったのかわからず終いだが、新兵の給金で買えるものではなかった事は確かだ。
「あ、あの…こんな高価な物を、ありがとうございました。」
素直に礼を言うしかなかった。
「あぁ、それでいいんだよ。」
店を出ていこうとすると、奥の方から別の店員が2人を呼び止めた。
「あ、リヴァイ様!こちらはいかがいたしましょう?」
それはキレイに畳まれてあったがクレアが先程まで着ていた着古した服である。
「それか…悪いが捨てといてくれ。」
「えぇー!?兵長ひどいです!持って帰ります!」
「ばか言え、荷物にもなる。雑巾は捨ててけ。」
「雑巾はあんまりです…私、全然服持ってないので雑巾でもないと困ります!」
「うるさいヤツだな…服ならまた買ってやるから、もう行くぞ。」
リヴァイは呆れたように店を出ていってしまった。
「あっ、待って下さい。」
また買ってやる?
それはいったいどういうこと…?
クレアにその意味は分からなかったが、今聞く余裕はなさそうだ。
慌ててリヴァイを追うと、店員に見送られながら2人は服屋を後にした。