第17章 奇行種、副官代理
塗ってみたはいいが、髪の毛につけた香油に混じっているのかそんなに大した変化はなかった。
しかし、「お風呂に入ってもなかなかとれないからつけ過ぎ注意」と言われていた。
何か特別な香りがした訳ではないが、自分の恋を応援してくれている親切な香油屋夫妻のプレゼントだ。
そう考えると、大きく背中を押されたような気がして、クレアは足早に兵門へと向かった。
兵門には先にリヴァイが着いていた。
ふと空を見上げると薄く雲がでていた為、傘を取りに戻ろうかと考えたが、今朝方ハンジはしきりにいい天気だと、言っていた。
ハンジは時々雲の流れを読んだりして天気を当てることがある。今日の天気には自信があったのだろうか。
「兵長!!お待たせしました!」
そんな事を考えていたらクレアが走ってやってきた。
「…………………」
そのクレアの姿を見た瞬間、リヴァイは傘の事などどうでもよくなるほどの衝撃を受け絶句した。
「あ…あの?兵長?」
「おい、奇行種……お前はもう少しまともな服は持っていないのか?」
目の前に現れたクレアは、明らかに着古したブカブカの長袖のワンピースを着ていた。
「そ、そうですよね…休日もほとんど兵舎にいることが多くて…買うタイミングを逃してました…」
リヴァイの言葉はもっともだ。以前モブリットからも同じような反応をされたのだ。クレアはただただ苦笑いで誤魔化すことしかできない。
ふとリヴァイを見れば、黒の薄手のジャケットにグレーのカットソー。黒のパンツというシンプルだがキチンと上品に着こなしている。
その姿は普通にかっこいい。
こんな自分とでは不釣り合いすぎてリヴァイと並んで歩くのも気が引けてしまう。せっかく食事に誘ってもらえたのに、申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまった。
「はぁ…ったく世話の焼けるヤツだな。ついてこい。」
「え?」
クレアはてっきり食事の件は無しにされてしまうかと思ったのだが、リヴァイはついてこいと言っている。いったいどういう事だろうか?
「早くしろ!置いてくぞ。」
「あっ!すみません!」
クレアはリヴァイの後を黙ってついていった。