第17章 奇行種、副官代理
「クソメガネの許可はとってある。今夜の仕事は休んでいいそうだ。」
「は、はい!」
クレアの返事にひとまず満足をすると、リヴァイは再び積まれた書類に目を通し始めた。
クレアはリヴァイと外に食事に行けるなど思ってもみなかった為、少し気持ちが浮ついてしまったが、ふとリヴァイの方に目をやると、まったくもっていつも通りだった。
自分の浮かれ具合に少し恥ずかしくなったクレアは、ザワつく胸を押さえ平静を装いながら仕事をこなしていった。
─時刻はまもなく4時─
「おい、今日はもう切り上げるぞ。」
「は、はい!」
リヴァイは切り上げると言ったが、よくよく確認すれば今日片付けなければならない仕事は全て終わっていた。
「着替えたら兵門前まで来い。待ってる。」
「わ、わかりました!」
クレアは紅茶セットを洗って片付けると、慌ただしく執務室を出ていった。
………しかし
「どうしよう……」
急いで支度をして兵門まで行きたいのだが、クレアはある問題に直面していた。
「着ていけそうな服がない…」
そう、クレアが持っているのは全て訓練兵時代の支給品の中から貰った物で、着古している上にサイズもろくに合っていない物ばかりである。
調査兵団の給金が入ったら少しはまともな服を買おうと思っていたが、休日もほとんど兵舎で過ごすことが多かったクレアは、ちゃんとした服など必要に迫られることがなかった。
そのため、自分に合った服など買うことがないまま今に至ってしまった。
フレイアのを借りようと思っても、フレイアは身長が高いためサイズが合わない。
唯一ペトラが似たような背丈だが生憎まだ訓練中だ。
頭を悩ませている間にも、刻一刻と時間は過ぎていく。もうこれ以上リヴァイを待たせるわけにはいかない。
クレアはとりあえず、着古してる中でも割とまともそうな物を選び着替えた。
革紐をほどき髪をおろすと、ふと香油屋で貰った物を思い出す。
─クレアの恋がうまくいくようにおまじないをこめたのよ─
確か香油屋のマーサはそう言っていた。
中身が何なのかは教えてくれなかったが、せっかくのリヴァイとのデートだ。使いどころは今であろう。
クレアはキューブ状になっている塊を指に少しつけると、うなじに塗ってみた。