第17章 奇行種、副官代理
フレイアが丸まった布団を揺り動かすが、ウンウンと唸るような声しか聞こえてこない。
何かあったのだろうか?
「クレアどうしたの?リヴァイ兵長と何かあったの?」
リヴァイという言葉にピクリと布団が動くと、ほんの少しだけ顔を出し、ボソボソとクレアは喋りだした。
「せっかく兵長の副官を任されたのに、仕事が忙しすぎて、仕事以外の話が全然できないの……自分の気持ちを伝えるには、兵長の側にいられる今しかチャンスがないのに…どうしよう…」
クレアは少し涙声だ。
フレイアはエルドから、リヴァイが恋愛相談をしにきた話や、自分達のことを根掘り葉掘り聞かれたことなども知らされていたため、ある程度リヴァイの事情もわかっていた。
さすがにリヴァイがクレアからのアプローチを待っているとは考えにくい。
おそらくはクレアと同じく、激務故にアプローチのきっかけを掴めていないだけだろう。
となると、クレアだけが焦って先走りする必要はない。恋愛に決まりなどないが、やはり女は男から告白される方が絶対いいに決まっている。
壁外調査前のリヴァイの様子を聞く限りだと、フレイアはもう少しだけリヴァイの出方を待ってみてもいいのではないかと考えた。
「まぁまぁ、クレア落ち着いて!焦って事を進めてもうまくはいかないよ。仕事がもう少し落ち着くまで待ってみたら?さすがに2週間以上たつし、少しずつ仕事量も減ってくるんじゃない?」
「……………うん…。」
確かにバタバタと忙しい中いきなり好きだと言ったところで、何にも伝わらないどころか、下手したら熱でもあるのかと医務室送りにされるかもしれない。
ここはフレイアの言う通りに、焦らず待つのが吉なのだろう。
クレアは気持ちが落ち着いたのか、ムクリと布団から出てくると風呂の支度を始めた。
「ありがとうフレイア……焦ってもいい結果にはならないよね……頭冷やしてもう少し様子見てみるよ。」
少し照れくさそうな笑顔を見せたクレアにフレイアはホッと一安心する。
「もう、いきなり布団に閉じこもるからビックリしたわよ。いつでも相談のるから安心してね!お風呂行くなら一緒に行こ!」
「うん!!ありがとう!」
2人は仲良く風呂場へと向かった。