第17章 奇行種、副官代理
「は、はい。では紅茶でも淹れますね。」
「やったぁ、ありがとう!でも身体は痛まない?」
「これくらいの動きは大丈夫なのでご安心下さい。」
そう言うと、ヤカンに火をつけながらクレアはハンジが食い散らかしたテーブルを何も言わずにサッと片付けた。
エルヴィンはクレアの神業の様なさり気なさに感動すると同時に、ハンジが巨人のこと以外、どんどん怠慢になっていかないかいささかに心配になった。
「団長、ハンジさん、お待たせしました。」
応接セットに3つの紅茶セットが並ぶと、エルヴィンは追加の焼き菓子を持ってテーブルに並べ、ソファにかけた。
「ほら、クレアも食べなさい。」
「あ、ありがとうございます!」
エルヴィンから出される焼き菓子はどれを食べても全て美味しい。はしたないと分かっていても、ついつい手がでてしまう。
「クレア、さっそくなんだが、仕事の話をしてもいいかい?」
「は、はい!」
クレアは紅茶で口に入っていた焼き菓子を一気に流し込んだ。
「もし、身体の調子が大丈夫そうなら今日からしばらくリヴァイの副官として仕事を手伝ってやってくれ。今回の壁外調査は被害も大きくて、幹部の仕事は膨大だ。」
「……え?私が兵長の副官ですか?」
「まぁ、臨時の副官代理ってところだ。そんなに身構えなくていい。ミケもハンジも副官がついてるが、リヴァイにはいないからね。」
「普段からリヴァイの仕事を手伝ってたみたいだし大丈夫でしょ!」
ハンジは焼き菓子を口に押しこみながらエルヴィンのあと押しをした。
「はい…まぁ、そうですが…」
2人の言っている事は最もなのだが、この2人に共通していることは、クレアのリヴァイに対する気持ちを知ってることだ。
そのため、この上官命令には何か意図があるように感じてしまうが、この身体では訓練もできないのだから仕方ない。
それに、臨時だろうと、副官代理であろうと、堂々とリヴァイの側にいられる仕事を仰せつかったのだ。
これはリヴァイとの距離を縮める良い機会でもあり、むしろ喜ばしい展開だ。
なのでこの際、2人の目論見云々は目を瞑ろう。
「では、さっそく今日から宜しく頼むよ。」
「はい!承知致しました。」
クレアは敬礼をすると、リヴァイの元に向かうべく、エルヴィンの執務室を後にした。