第17章 奇行種、副官代理
クレアが目を覚ましてから三日後、無事に熱が下がったため自室に戻ることが許された。
──コンコン──
──カチャ──
「クレア、いますか…?」
自室に戻る準備をしていると、フレイアが医務室にやってきた。
「あ、フレイア!おはよう、訓練前にどうしたの?」
「あのね、身体が大丈夫なら執務室に来るように伝えてくれって団長に頼まれたの。熱は下がったの?」
「うん、もうすっかり!肋骨はまだ痛いけど……団長のところには兵服に着替えたらすぐに行くね!ありがとう。」
「了解!じゃあ訓練いってくるね!」
「行ってらっしゃい!」
クレアは訓練に向かうフレイアを羨ましい気持ちいっぱいで見送った。
……団長からの呼び出しということは、怪我が治るまでの自分の仕事のことであろう。
医師からは重い物を持ったり、身体を酷使するようなこと以外なら特に生活制限は無かった。
もちろんハンジの夜の仕事も制限無しだ。
おそらくは調理場の下働きか倉庫の整理整頓などだろうか。
クレアは久しぶりに帰ってきた自室に戻ると、3日ぶりに兵服に着替えた。
──コンコン──
「クレア・トートです。」
「クレアか。入ってくれ。」
……壁外調査前にここへ来た時は、応接セットのソファで、キスをしてしまうギリギリの距離までエルヴィンと接近してしまった。
あの時の記憶が急に蘇ってしまい、ドアをあけるのを一瞬躊躇してしまう。
しかし、あれは団長なりのアドバイスだったのだ。
変に意識してしまう方が失礼だと頭を切り替え、思い切って扉をあけた。
「失礼します……」
「おっはよー!クレアもう熱は平気なの?」
応接セットでムシャムシャ茶菓子を食べていたハンジはクレアの方を向くと、ブンブンと手を振った。
「ハ、ハンジさん?」
なんだ、ハンジさんもいたのか……
ハンジの姿を確認すると、先程までの緊張はすっと何処かへ消えていってしまった。
「今、エルヴィンと怪我が治るまでのクレアの仕事について話してたんだ。ほら、座って座って。」
ハンジはクレアも食べてと言わんばかりに自分の隣をポンポンと叩いた。