第16章 奇行種、奮闘
「(え?なになに?先生は何か知ってるの?)」
「(いえいえ、なんとなくそう思っただけです。)」
幹部3人が、思わず突っ込みたくなったのは言うまでもなかった。
「(では、私はそろそろクレア君の痛み止めが切れる頃なので、これで失礼しますよ。)」
クレアの様子も心配だったが、このタイミングで中に入れば覗き見をしていたとは100%バレるであろう。
エルヴィン、ハンジ、ミケの交わる視線は、リヴァイの怒りを買うのは御免だと言っている。
3人はそれぞれの持ち場に戻るため医師に軽く会釈をすると、ゾロゾロと解散していった。
──カチャ──
「クレア君?目は覚めたかい?」
「「!!!」」
医師の声と同時に2人はパッと離れると、リヴァイは近くにあった丸椅子に腰掛けた。
「先生、き、昨日はご迷惑おかけして申し訳ありませんでした…」
「いや、いいんだ。むしろ怪我をしていたのに負傷兵の手当など任せてしまってすまなかった。兵長、今彼女の診察をしても大丈夫ですか?」
「あぁ、かまわねぇ…俺は外したほうがいいか?」
「いえいえ、そのままで結構ですよ。」
すると、医師は再度負傷時の状況を問診したり、検温、痛みの具合を診たりと細かく診察していった。
「また少し熱が上がってきたね、脇腹も痛まないかい?」
「そういえば…少し寒気がします…あと、段々痛みも強くなってきました。」
先程までリヴァイの抱擁があったため、寒気などには気づかなかったが、薄い部屋着で1人で座りだしたらゾクゾクと寒気がしてきた。
「熱は肋骨の負傷の影響もあるけど、、昨日の雨で風邪を引いた可能性もあるね。ひとまず、熱が下がるまでは医務室で絶対安静。熱が下がったら自室に戻っていいけど、訓練は痛みが完全に無くなるまでしちゃいけないよ!」
「え?!それってどれくらいですか?」
「んー、今の様子だと折れてはいないだろうから…早く見積って3週間前後といったところかい?」
「そんなに長い間ですかぁ……」
元々訓練が好きだったクレアはガクッとうなだれてしまった。
「どっちにしても、痛みが残る状態では立体機動装置は使えないし、馬に乗るのも不可能だから自室に戻っても、無茶はしないでおくれよ。」
そう言うと、医師は痛み止めの注射の用意を始めた。