第16章 奇行種、奮闘
「安心しろ。お前がもう部屋に返してくれと言いたくなる程仕事は山積みだ。回復したらすぐに手伝ってくれ。俺はお前以外に頼むつもりはないからな…」
「は、はい…かしこまりました。」
「それと、もう少し、このままでいいか……」
「は、はい……」
やっとの思いで誤解が解けると、2人の間に流れる雰囲気は、いつもの穏やかなものに戻っていた。
後ろから優しく抱きしめられる腕はとても心地よく、自然とクレアの手はリヴァイの腕に添えられた。
何も話さなくても、その静寂すら愛おしい。
そんな時間が刻一刻と過ぎていった。
──────────────────
時同じくして、医務室扉の外側。
扉を数センチほど開き、中の様子を伺っていた……否、覗き見ていたのは、まさかのエルヴィン、ハンジにミケだった。
「(はぁぁぁ?!なんでそうなるの?普通ここで、お前が好きだ!とかいってキスの1つもするのが王道なんじゃないの?!)」
ハンジがギリギリと歯ぎしりをしながら拳を握り締めている。
「(せっかくの、ベストなシチュエーションなのに、リヴァイはいったい何を考えているんだ……)」
エルヴィンも呆れたようにため息を漏らす。
「(フン、案外自分で自分を焦らすのが好きな変態野郎だったりしてな。)」
ミケに至っては言いたい放題だ。
「(アハハ!ミケ!それもし本当だったらマジウケる!)」
「(だろ?!)」
幹部3人がこぞって覗き見をしていると、背後から医務室の主である、医師が声をかけてきた。
「(これはこれは、団長はじめ、幹部の方々。お揃いでいかがされましたか?)」
「(あー!先生!おはようございます!ちょっと中が取り込み中でして…)」
いったい何事かと医師も扉の隙間から中を除くと、そこにはクレアの後ろから優しく抱擁をするリヴァイの姿が目に入った。
「(ほー!兵長とクレア君はそういう関係だったのですか?)」
「(違うんだ、中々進展しなくてイラついてきているんだ。)」
ミケがヒゲをいじりながら事の流れを簡単に説明をした。
「(そうかい、そうかい、若いってのはいいもんですなぁ!!なに!何も心配しなくてもあの2人なら大丈夫であろう。)」
医師はうんうんと頷きながら得意げに答えた。