第16章 奇行種、奮闘
「さぁ、腕を出して。」
痛み止めの注射を打ってもらったクレアは布団をかけて横になった。
「私は奥の仮眠室で少し休憩しているから、何かあったら呼んでおくれ。」
徹夜で、講堂の負傷兵を診ていた医師は、奥の仮眠室へと入っていった。
「クレア…大丈夫か?」
額に手を当てると、かなり熱かった。
「すみません…なんだか急に熱が上がってきたみたいです。でも注射も打ってもらったので、すぐに楽になるかと……」
「…………」
シャワーから上がってきた時より顔色が悪くなってるのに気づいたリヴァイは毛布を1枚持ってくると、クレアの布団の間に入れてやった。
「寒いんだろ……」
「あ、ありがとうございます。」
「医師の言ってた事は俺がエルヴィンとハンジに伝えといてやるから、お前は眠れるならもう一度眠れ。俺は今から朝飯に行くから、食堂には病人食を用意しとくように言っといてやる。」
「わかりました…色々とすみません…」
「じゃあな、ゆっくり休めよ…」
──パタン──
リヴァイが出ていくと医務室はシンと静まり返ってしまった。
今回の壁外調査では肉体的にも精神的にも奮闘できたつもりであったが、天候の崩れは予想外であったし、まさか自分が負傷するなどとは想定外であった。
でも、生きている……今ちゃんと生きている…
調査兵をやっていく上でこれは最重要項目である。
痛みと発熱で思考がメチャクチャだが、とにかく今回も生きて帰ってこれて、沢山の負傷兵の手当もできたのだ。
悔しいことも、不甲斐ないと思ったところもあったが、少しは自分を褒めてもいいのではないか……などと前向きな考えを巡らせながらクレアは再び眠りについた。
──早く治って訓練に戻れますように──
クレアは心からそう願った。