第16章 奇行種、奮闘
脱衣所の扉をあけると、狭い脱衣所で下着姿のまま仰向けに倒れているクレアと目があった。
「ヒッ!!リヴァイ兵長??!!」
思ってもみなかった人物の登場にクレアはひっくり返ったまま小さく叫んでしまった。
そして慌てて手に持っていたバスタオルを、身体にかけた。
「おい…化けモン見たような声出すんじゃねぇよ。いったいどうしたんだ。」
「あ、あの……痛み止めが切れる前にシャワーを済ませようとしたのですが…右の肋骨にヒビが入ってるようで、左手だけでは思うようにできず……色んな物を落としながら着替えてたら滑って転びました……」
よく見ると、脱衣所の床はびしょびしょであった。
左腕では身体を拭くのも髪を拭くのもまごついて、床が濡れていることに気づかなかったのだろう。
「なぜクソメガネに手伝ってもらわなかったんだ。」
「……なんとか一人でできるかと思ったのですが……無理でした……」
クレアは苦笑いでごまかすことしかできなかった。
「起き上がれないのか?」
「……すみません、無理そうです……」
「はぁ……ちょっと待ってろ…」
リヴァイは一旦脱衣所をでると、医務室の掃除ロッカーから雑巾を持って戻ってきた。
「立ち上がった時にまた転んだらバカみてぇだからな。」
そう言うと、脱衣所の水分を拭き取ってから、クレアを抱き起こす。
「あ、ありがとうございます……」
ぶっきらぼうで不機嫌そうなのに、何故か優しく感じるリヴァイの行動。
久しぶりに感じたその優しさに自然と胸がドキドキしてしまう。
「着替えはこれでいいのか?」
リヴァイがバックから取り出した着替えは、調度前開きのロングワンピースだった。
肋骨を負傷したかもしれないクレアにフレイアが気を利かせてくれたのだろう。
「あ、ありがとうございます!」
クレアは着替えを受け取ると、こちらはすんなりと着ることができた。
医務室のスリッパを履き、スリスリとすり足でベッドまで戻ると、枕カバーが、新しくなっているのに気がつく。
「あ、あの、兵長が替えてくれたんですか?」
お礼を言おうと振り返ると、何故だがバスタオルを持ったリヴァイがクレアの方を睨んでいた。
「あ、あの…兵長?」
私はまた何か気に障ることをしてしまったのだろうか…