第16章 奇行種、奮闘
ハンジはいったい誰を呼びにいったのだろうかと、少し気になったが、おそらくは講堂にいる先生だろう。
そう考えると、特に気に止めることもなくクレアはシャワー室の扉をあけてお湯を出した。
──ザァァァァァァァ──
「い、いったぁ…」
やはりいくら痛み止めが効いていても、右腕を上げて洗髪をするのはやはり無理そうだ。
クレアはバリバリになっている長い髪を左手を駆使しながら根気よく何度も洗い流した。
──コンコン──
医務室の扉を誰かがノックをするが、クレアはシャワーを浴びているため、ノックの音など聞こえない。
──コンコン──
………当たり前だが中からの返事はない。
──カチャ──
「……また寝ちまったのか?」
少し遠慮がちに扉が開くと、中に入ってきたのはリヴァイであった。
「………?」
あのクソメガネがやっと目を覚ましたと執務室に飛んできたから自分もこうして急いで来たというのに、医務室のベットには誰も横になっていない。
「チッ、どういうことだよ…」
ハンジからあらかた状況は聞いていたものの、リヴァイはまだクレアの無事な顔を見ていない。
少し苛立ちながらベッドに目をやると、1番手前のベッドの枕カバーが泥や血液で汚れていた。
それと同時に奥のシャワー室からシャワーを出す音がしているのに気づく。
「風呂に入ってたのか……」
リヴァイは軽くため息をつき、汚れた枕カバーを替えてやると、応接セットのソファに座り込み、クレアが出てくるのを待った。
1人でシャワーができるのなら、そこまで大怪我ではなかったのだろうか……でてきたらまず何と言ってやるか…
などと考えていたらシャワーの出る音がピタリと止んだ。そろそろ出てくるだろう。
──ガタン──
──ガチャン──
「………………?」
しかし、いくら待ってもクレアは脱衣所から出てこない。何故だか時折物が落下する様な音もする。
いったい何をしているんだ?
──バタン!!!──
「!?」
しばらく何も音がしなくなったと思ったら今度は一際大きな音が脱衣所から聞こえてきた。
「倒れたか?」
嫌な予感がし、リヴァイはシャワー室に向かうと、迷うことなく脱衣所の扉をあけた。
「おい!大丈夫か?!」