第16章 奇行種、奮闘
「そしたら、身体流してくる?先生の話だと、朝には痛み止めの注射切れてくるって言ってたから。」
「そうなんですか?そしたらまた痛みだす前に済ませたほうが良さそうですね…」
服は医務室の患者服に変えられてあったが、身体はベタベタと気持ち悪いし、ふと自身が使ってた枕に目をやると泥やら返り血やらが付いてしまっている。
髪の毛もおそらく悲惨な状態であろう。
「そうくると思って!ほい!フレイアから預かってきたよ!お風呂道具と着替え!」
ハンジはヒョイっとクレアにいつも使っている風呂用のバックを手渡した。
「こんな物まで…わざわざありがとうございます!」
礼を言い、受け取ると同時にフレイアの無事も確認できたクレアはホッと一安心する。
昨日講堂で姿を見ることがなかったから、怪我もしていないのだろう。
ゆっくりベッドから降りると、若干痛みはあるものの、まだ薬の効果は感じられていたため、ゆっくりとシャワー室に向かおうとした。
「大丈夫?手伝おうか?」
「あ、いえ、少し痛みますが、多分大丈夫です。あの…ここにいるのは私だけですか?」
肋骨に響かぬようスリスリとすり足で進むと、医務室のベッドは全て空いていた。
「うん、昨日の重症兵士はみんなまだ講堂なんだ。動かさないほうがいいみたいでね。先生も今は講堂にいるんじゃないのかな?」
みんな昨夜は徹夜で仕事をしてたはずだ。
それなのに自分だけぐっすりと眠っていたなんて、新兵としての自分の立場を考えると胸が痛んでしまう。
「先生も、ハンジさん達も…みんな徹夜で働いてたのに…こんな時に私はいったい何をしていたんでしょうか……」
自分の不甲斐なさにガクッと肩を落としてしまう。
「コラ!それが無茶だって言ってるの!いい?今回のクレアは負傷兵なんだからね!大人しく寝てること!」
呆れたように諭されると、ギュッとホッペをつままれた。
「シャワー、1人で大丈夫なら私外しても平気?馬たちの様子みたいのと、あとクレアの意識が戻ったら教えてくれって言われてるんだ。」
「は、はい。大丈夫です。デイジーのこと、宜しくお願いします!」
「了解!またあとでくるからねー!」
ハンジは手を振って医務室を出ていった。