第16章 奇行種、奮闘
うずくまりわずかな時間思考がストップしてしまったが、巨人に握り潰されなかっただけ不幸中の幸いだ。
あまりの痛みで目眩がするが、立ち上がり巨人を仕留めよとクレアの中の本能が、己の手に、足に、命令を下した。
──ザシュッ──
歯を食いしばり起き上がると、暴れる巨人の踵を削いで足を止め、トドメを刺した。
「クレア!大丈夫か?!」
討伐を終えたハンジ達が慌ててクレアに駆け寄った。
「すみません…視界が悪くて一瞬判断が遅れましたが大丈夫です。急ぎましょう。」
よく見えなかったが、クレアはもの凄い勢いで地面に叩きつけられていた。
大丈夫な訳がないと2人は思ったが、トロスト区まではもう間もなくだ。
ここに留まるのは危険と判断し、壁内へと急いだ。
ドカドカドカドカドカドカドカドカ
ウーランを並走させながら走るクレアは右脇腹の痛みで意識が遠のきそうだった。
今日はいったい何体の巨人を討伐しただろうか…
もう思い出すことが出来ないほど討伐した…
ただ1つ言えるのは、この痛みではもう巨人が現れても正確に討伐はできないだろう…
しかし、何が何でも生きて帰らなくては。
今のクレアはその強い気力のみで意識を保っている状態だった。
クレアの願いが届いたのか、その後は巨人に遭遇することなく、無事に壁内に戻ることができた。
しかし、調査兵団の兵舎に着くと敷地内は、怪我人の搬送や、馬のケアや怪我の治療、死亡者の確認などでごった返していた。
「怪我人は講堂に運べー!!!」
何人かの兵士が叫んでいる。
大雨のため怪我人は広い講堂に運ばれているようだ。
ひとまず3人は馬を連れて休ませてやりたかったが、少し慌てた様子のエルヴィンに引き止められてしまった。
「ハンジ!この雨の中よく無事に戻ってきたな!悪いが負傷兵で講堂が大変なことになっている。クレアを借りていくぞ!」
エルヴィンはクレアが持っていたデイジーとウーランの手綱をモブリットに渡すと、手を引いて連れて行ってしまった。
「あっ!エルヴィン待って!クレアは……」
ハンジはクレアが怪我をしている可能性があると伝えたかったのだが、その声は届かなかった。