第16章 奇行種、奮闘
時同じくして、リヴァイ班も大雨に降られる中、馬を走らせていた。
大雨に降られる壁外調査は、微かにファーランとイザベルのことが頭の片隅でフラッシュバックしてしまい、リヴァイは例えようのない想いが胸のあたりでつかえていた。
それと同時に考えてしまうのはクレアのことだった。この視界の悪い中、危ない目に合っていないだろうか、無茶はしていないだろうか……リヴァイはクレアの安否が心配だったが、自分の立場を思い出し、かぶりを振った。
今のリヴァイは部下の命を預かる班長であり、兵士長だ。個人的な感情よりも、班員と共に無事に壁内まで戻ることに集中しなくてはならない。
「お前ら!この視界だ!巨人の出現は一瞬だぞ!気を抜くなよ!」
「「「「はい!」」」」
「兵長!!あれは!!」
しばらく走ったところで、ペトラが指を指した方向に目をやると、そこは血の海になっていた。
巨人の項を削いだ後の蒸気が出ていないということは、討伐は失敗に終わったのだろう。
「この視界でやられちまったみてぇだな……ペトラ、オルオ、走れる馬はいるか?いるなら連れて帰るぞ。」
「「はい!」」
オルオとペトラが倒れている馬を1頭ずつ確認すると、3頭は連れて帰れそうだった。
「よし、トロスト区まで急げ!」
リヴァイ班もトロスト区まで全速力で急いだ。
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冷たい雨に当たりながら大分走った。
マントを被っていても全身は下着までびしょ濡れだ。手綱を握るクレアの拳も冷えてしまっている。
デイジーの体調が心配になり始めていたところで、3人は旧市街地に入ってきた。
「ハンジさん、ここはもしかして?」
「うん!トロスト区近くの旧市街地だ!壁までもうすぐだよ!」
「よかったぁ……」
まもなく壁内に戻れる…少し安堵するが、いきなり斜め後方から馬が走ってくる音がしてきた。
ドカドカドカドカ
少し興奮した様子で走ってくるが、乗っている人間がいない。
「あれ?あれは…」
「ウーランでしょうか…?」
脚や腹周りは泥だらけになっているが、あの葦毛は、まぎれもなく予備馬のウーランだった。
おそらく、並走していた兵士はすでに死んでしまったと思われる。
クレアはデイジーから一旦降りると、ゆっくりとウーランに声をかけた。