第4章 懇願
午後の訓練後半はチームに別れての巨人討伐訓練だ。
これは毎回ランダムにチームを変え、訓練兵の個々の性格や戦い方の癖などをみるものだ。
森の中にはキース教官の部下たちが何人も採点係として入っており1人1人細かくチェックをされる。
リーダー気質、討伐補佐役、独断傾向、暴走系、訓練兵の性格も様々だ。
クレアは前半の森抜け訓練の様子を見る限り、1人で猛将ぶりを発揮するものかと、リヴァイとハンジは想像していたが、意外にもそうではなかった。
クレアは自身のチームのメンバーからつかず離れずの距離を保ち、自分の出番を冷静に待っていた。
討伐補佐をかってでたり、おいしい所を横取りすることもなく、皆の判断が遅れたり、奇襲を受けた場面で素早く討伐をしてみせた。
全体を通してみるとクレアの討伐の傾向はいたって控えめだった。
このクレアの姿を採点係はどんな評価をするのだろうか?
──控えめ。指示待ち傾向。── であろうか?
少なくともリヴァイとハンジは違った。
「……クレアはちゃんと見えてるんだ。チーム全体の動きが。リーダー役の子が誰にどういった指示をだすとか、どのタイミングで誰が討伐補佐に入るのかとか、とにかく全部だ。だからどこでミスがでるか、奇襲の時に手薄な場所がどこか、見えてるから素早く飛び出せているんだね!」
「そうらしいな…立体機動であれだけの腕をもってるんだ、過信して暴走するもんかと思ったら意外に冷静沈着だな…」
「それに、ミスが生まれた場面での冷静な対処は仲間の命を助けることになる。クレア、本当にすごいよ!本気で調査兵団に入って欲しいよ。」
ハンジは目をキラキラさせながら双眼鏡で食い入る様にクレアを見つめていた。
他のチームの討伐訓練も一通り視察すると日は傾き始めていた。
「おい、ハンジ、まもなく訓練終了だ。見つかる前にずらかるぞ。」
「え?!キース教官と話してかなくていいの?」
するとリヴァイは立体機動を使って、訓練兵の採点係の所へ飛んでいき、何かを伝えるとすぐに戻ってきた。
「教官には後日エルヴィンから手紙をよこすと伝言を頼んだ、それでいいだろう…」
そして2人は訓練兵に見つからないように帰り支度を急いだ。