第16章 奇行種、奮闘
配置についてしばらくすると、各方面から赤の信煙弾が上がり始めた。
やはりこれだけの人数が1箇所に集まっているせいか、巨人の出現が多いように感じる。
だが、拠点の周りに配置されたのは討伐に長けた班ばかりだ。
順番に緑の信煙弾が上がり始めたのを確認すると、クレアは少し安堵をする。
しかし、リヴァイの班はエルド、オルオ、ペトラの3人とリヴァイ、グンタの2人の2班に別れての配置となっていたのをクレアは思い出した。
人類最強のリヴァイに対して、心配などいらぬものであるのは百も承知である。
だが、巨人の出現が多く感じる今、クレアは想い人の無事を祈らずにはいられなかった。
兵長…御武運を…
次々と上がる緑の信煙弾を見つめながら心の中で呟いた。
「クレア!信煙弾打って!3体こっちに向かってるよ!」
ハンジの声かけでハッと我に返ったクレアは急いで赤の信煙弾を打ち巨人が向かってくる方角を見た。
リヴァイの心配も大事だが、自分が生き残っていなければ意味がない。
「デイジー!いくよ!」
デイジーの腹を思い切り蹴飛ばし自身を奮い立たせると、クレアはこちらにむかってくる巨人めがけて全速力で迎え討った。
現れる巨人を次々と討伐し、赤と緑の信煙弾を交互に打つこと数時間。
拠点のある中央から緑の信煙弾が上がった。
エルヴィンからの拠点設営完了の合図だ。
「やっと終わったみたいだね!中央に急ごう!」
「「はい!」」
拠点まで戻ると、建物は見事に修復されており、荷馬車には重症兵士が乗せられ、帰還の準備が整っていた。
ハンジ達も急いでガスと刃の補充をし、整列をした。
「総員!帰還せよ!」
エルヴィンの号令でみな馬を走らせる。
今からならなんとか日没前には帰還できそうだ。
──ドカドカドカドカドカドカ──
「………………………。」
しばらく順調に走っていたが、ハンジは涼しい秋風に少し重苦しい湿度が混ざり始めているのに気がついた。
「ハンジさん…?」
「なんか天候が崩れそうだね…トロスト区まで持ちこたえてくれればいいんだけど……」
「そ、そんな…」
クレアはまさかのハンジの言葉に全身が緊張に包まれるのを感じた。