第16章 奇行種、奮闘
「クレア、到着して早々すまないが、怪我人が出ている、頼めるか?」
「はい!もちろんです。」
クレアはすぐにデイジーから医療品セットを降ろし、準備を始めた。
「クレア、デイジーは私が見ておくから行っといで!」
「ありがとうございます!ハンジさん!」
長距離を走ったためか、巨人との戦闘を避けられなかった場面も多かったのだろう。
ここに来るまでで軽症の兵士も合わせると、かなりの人数が負傷していた。
重症の兵士から次々に手当をしていくが、中には命は繋げたものの、兵士としてはもう働けないだろうという者までおり、クレアは思わず胸を痛めた。
拠点を完成させ、彼らも含め無事に壁内に戻れる様に自分は全力で戦うのみ。クレアは縫合する手を休めることなく、自身に強く言い聞かせた。
最後の軽症兵士の手当が終わると、すぐにエルヴィンの号令が入った。
「これより、拠点の設営を行う!巨人討伐担当は配置につけ!」
拠点の設営は新兵が中心となり、牧場跡地の建物の修復と物資の補充を行う。
補充した物資が雨風に当たらないようにしなくてはならない為、建物の修復はなかなか骨の折れる作業だ。
その間、巨人の侵入を防ぐのが「巨人討伐担当」である。討伐能力の高い班が拠点の周りを囲み、近づいてくる巨人を討伐するのだ。
クレアは新兵であるが、前回の壁外調査での討伐能力を買われ、今回はハンジ達と共に討伐担当に回された。
クレアがデイジーに乗ろうとしたところで、少し息を切らした声で名前を呼ばれた。
「クレアーーー!!」
声の主はフレイアだった。
「フレイア!!無事でよかった!」
「クレアもね!大丈夫だと思うけど、討伐、気をつけてね!」
「もちろん!ちゃんと討伐するから拠点の設営宜しくね!」
2人はお互いの無事を確認すると、それぞれの配置まで急いだ。
拠点から1キロ程離れたところでハンジ達は待機をしていた。この辺はところどころに建物があり、討伐には有利な地形をしている。
討伐担当は、巨人が現れたらまず赤の信煙弾を打ち、無事討伐できたら緑の信煙弾で合図を出す事になっている。
紫の信煙弾が上がれば救援だ。
クレアは気持ちを落ち着かせながら右に左に神経を尖らせた。