第15章 リヴァイの奇行種攻略作戦
「だ、団長!驚かさないで下さい!」
爽やかに笑うエルヴィンをよそに怒ってみせたが、クレアは冷静になろうと今一度、よく考えてみた。
あのままエルヴィンにキスをされていたとしたら、自分の気持ちはエルヴィンに向いてしまっていただろうか?そんな事は考えなくてもわかっている、もちろん否だ。この好きという気持ちはリヴァイ以外ありえない。
それは、リヴァイも同じ気持ちなのだろうか…
リヴァイに好きな人がいなければいないまま、そうでなくても、無理矢理迫ってくる女に心変わりすることはないと。エルヴィンの言っている事はそういうことなのだろうか。
「まぁキスひとつで、心変わりする男もいなくはないが、リヴァイに限ってはありえないよ。君自身がそう思うようにね。だから今朝の事はもう忘れなさい、リヴァイもクレアの不機嫌な理由が分からずヤキモキしてるはずだ。」
段々と冷静な表情に戻ってきたクレアに安心したエルヴィンは、先程ほどいてしまった革紐を手に乗せて返してやった。
「あ、ありがとうございます。」
クレアは革紐を受け取ると、素早く結びいつもの髪型にもどした。
「どうだい?気持ちの整理はついたかい?訓練には励めそうかな?」
「は、はい!変な相談をしてすみませんでした…もう大丈夫です。ここ、片付けたら朝食に行ってきます。」
「あぁ、片付けまですまないね…リヴァイとは明日には仲直りするようにな。」
「はい…今日は訓練では一緒にならないので…明日には…」
手際よく片付けを済まして執務室を出ようとしたところで、エルヴィンから声をかけられる。
「あ、クレア、実体験とはいえ、さっき君に言った言葉に、嘘はないつもりだ。リヴァイがダメなら私はいつでも待ってるからな。」
書類からチラッと笑顔を覗かせながらエルヴィンはクレアを見つめた。
さっきの言葉?クレアは少し考えこんだかと思ったらニッコリと照れくさそうに返事を返した。
「ありがとうございます、団長に可愛いと言ってもらえるなんて光栄です。失礼しました。」
──パタン──
「はぁ…リヴァイには譲りたくなくなる、と言った方だったんだがな…」
リヴァイが奇行種と呼ぶのも頷ける。
エルヴィンは、クレアの鈍感具合にため息をつくが、もちろんそれは聞こえてるはずがなかった。