第15章 リヴァイの奇行種攻略作戦
いつもは美味しい紅茶を出そうと張りきって淹れていたが、今はそんな気分とは程遠い気持ちだ。
リヴァイがモテるのは十分に知ってはいたが、あんな場面を見てしまっては動揺しない方がどうかしている。
もちろん、迫ってくる女兵士を相手にしていない事は前回の壁外調査前の時に聞いてはいたが、やはり心穏やかではいられない。
リヴァイの身持ちの固さは知っていたが、さすがに何もせずこのままモタモタしていたら、リヴァイは誰かに取られてしまうのではないかという不安がクレアの全身を巡り、胸を締めつけていた。
だからといって、今のクレアにはどうすることもできない。
ただただ歯がゆい気持ちに苛立つばかりだ。
しかも、リヴァイとは恋仲でもなんでもない。そのため、そんな気持ちを悟られる訳には絶対いかなかった。
クレアは全力で平静を装いながら紅茶を淹れて、リヴァイの机に持っていった。
「お待たせしました…」
「あぁ、すまないな。」
クレアも書類の束を抱えると、いつものソファで仕事を始めた。
慣れている仕事のはずなのに、一生懸命意識しないと、先程のキスシーンがフラッシュバックしてしまい集中できなくなってしまう。
奥歯をグッと噛みしめるように力をいれて、仕事を進めていった。
リヴァイは、昨夜はベッドの中でずっとクレアの事を考えていた。
壁外調査前にデートの誘いをするつもりはなかったが、帰還後の休日の予定くらいは聞いてもいいだろうと思っていた。
そのため、少し2人で話す時間でも作れればと思い、早目に執務室に来たのだが、運悪くも毎度恒例の押しかけ兵士の相手をしなくてはならなくなり、計画は丸潰れだった。しかも強引にキスまでされてしまった。
まさかクレアにあんな場面を見られるとは思っても見なかったが、迫ってくる女兵士を相手にしていないことは以前に話してあったし、何も問題はないはずだ。
そう…何も問題ないはず。
しかし、何故だがクレアの後ろ姿からはピリピリとしたオーラが伝わってくる。
さらには、書類に目を通しながら紅茶を口に入れると、いつもと違う違和感に一瞬眉間にシワが寄る。
紅茶の香りに、いつもの奥深さが感じられなかったのだ。
リヴァイはここでやっと、クレアの様子がいつもと違うことに気がづいた。