第14章 奇行種の妙案
なんて事をしてしまったのだ。
クレアは申し訳なさと恥ずかしさで何も言えなくなってしまった。
見た目だけではなく、もちろん味にも自信があったが、作った目的はハンジのプレゼントであったため、リヴァイにあそこまで食べさせるつもりはなかった。
しかし、慣れない酒に酔っていたところにハンジからの予想以上のリアクションが貰えたためか、自身のテンションも上がってしまい、ブレーキがきかなくなってしまったのだろう。
これが俗に言う「酒に飲まれる」ということか……
リヴァイに嫌われてしまったかもしれないと思ってももう遅い。まさに後に悔やむで後悔だ。
「と、とんだ失礼を……兵長、申し訳ありませんでした……」
予想以上に生気の抜けていくようなクレアの姿を見たら、気がすんだのか、リヴァイはクレアの頭をポンと撫でてやると、立ち上がり仕事の準備を始めた。
「思い出したならもういい。これで酒の怖さは十分に理解できたな?俺以外の男の前で同じ失敗はするんじゃないぞ。襲われても文句は言えないからな。」
「…え?」
別にリヴァイは何も怒っていなかった。
しかし、可愛く酔ったクレアに自分だけが翻弄された挙げ句、本人は何も覚えていないとなると、なんだか悔しくなり、大人気なく仕返しをしたくなってしまったのだ。
「それと、お前の料理の腕がいいことはよく分かった。巨人の模型でなければちゃんと食ってやる…だから来年もハンジの誕生日を祝うつもりならもっとまともな物を作ってくれ。」
「え?……あ、あの、私の料理、美味しかったですか?」
「……あぁ、見た目はともかく、味は悪くなかった…」
そう言いながらフイッと後ろを向いてしまった兵長の顔が少し照れ臭そうに感じたのは、私の都合のいい解釈なのだろうか。
それに蘇った自分の記憶が正しければ、兵長は無理矢理食べさせる私に、されるがまま黙って食べてくれていた。本当に嫌なら手を振り払って出ていくこともできたはずだ。
文句も言わずに食べてくれて
部屋のカギをかけておいてくれて
今朝は顔色をみて薬を出してくれた。
そして、料理の腕も褒めてくれた。
こんなにも嬉しい……
自分に向けられた優しさに胸が熱くなったクレアは、リヴァイに対する気持ちがより一層大きくなるのを感じずにはいられなかった。