第14章 奇行種の妙案
クレアは放り投げられた物を両手で受け取り確認すると、なぜリヴァイが自分の部屋のカギを持っているのか全く理解できなかった。
「なぜ兵長が、これを……?」
「お前が昨日ハンジの執務室で酔いつぶれたのを、俺が部屋まで運んだんだ。一晩部屋のカギを開けとくわけにはいかなぇだろ。だから俺が預かっていたんだ。感謝しろよ……」
クレアを部屋まで送ったあと、リヴァイはカギを開けたまま自室に戻ることは到底考えられなかった。
たった一晩であっても何かが起こってからでは遅いのだ。
翌朝クレアが起きてくるタイミングで返せば問題ないだろうと、少し早めに部屋の前で待っていた。
しかし強い酒でつぶれたのにも関わらず、早起きをしてきたため、「たいした奇行種だな…」と拍子抜けをしたが、よく見ると少し顔色が悪い。
リヴァイは黙って執務室に向かって歩きだした。
「あ、兵長…その…ご迷惑かけてしまい、すみませんでした…」
クレアはカギを首にかけると、謝りながらついて行くが、リヴァイは何も言ってくれない。
怒っているのだろうかと、胸が不安で一杯になる。
執務室につくまで、結局リヴァイは何も言ってはくれなかった。
戸惑いながらも中に入るが、出てけとは言われない…
ここにいても大丈夫なのだろうか。
「おい、そこに座ってろ。」
ぶっきらぼうに言い放たれた言葉は、ここに居ても良いという意味なのだろう。
少し安心したクレアは小さく返事をして、いつものソファに腰掛けた。
数分後、お湯を沸かしていたリヴァイは紅茶を淹れて応接セットまで持ってきた。
何故かクレアの前には紅茶と水を置く。
「あ、ありがとうございます。あの、兵長これは…」
クレアが水の入ったグラスを指差すと、リヴァイは机の引き出しから小さな白い包を取り出し、グラスの横に置くと、クレアの隣にドカッと座った。
「二日酔いの薬だ。頭痛いんだろ?」
まさかの言葉にクレアは驚いた。
「そんな…どうして……頭が痛いってわかったんですか…?」
「そんな顔色してりゃ分かるだろ。あの酒はアルコール度数がかなり高いからな。酒に慣れてないやつが飲めばこうなる。勉強になったか?」
クレアはまさかのリヴァイの優しさに、思わず嬉しさが込み上げた。