第4章 懇願
すると、クレアの愛馬は大きく頭を2回振ると少し頭を下げきっちりと馬銜(ハミ)を受けた体制をとる。
完璧に集中できていて、主人の命令はまだかまだかと前がきをしながら待っていた。
壁外にでてしまえば、最速で走らせるだけであるが、馬銜受けは、馬術の基本だ。
馬の集中力を高め、コンタクトの要となる。
しかし、一朝一夕に身に付くものではない。
相当自主練習を積んだはずだ。
「すごいねリヴァイ!スタート前から完璧に戦闘モード入ってるね。」
「たった2年でここまで馬の調教ができるとはな、おもしれぇじゃねぇか。」
ここでスタートのピストルが鳴る。
「パァァァァン!」
一斉に駆け出すが、やはりクレアの愛馬の瞬発力は群を抜いていた。
クレアはたくさん仕掛けられている障害物の一手、二手先を読み、愛馬に負担のかからない障害物を選び飛越していく。
愛馬もわずかなコンタクトものがすまいと耳をピンと立て猛進する。
障害物コースを抜けるとあとはゴールまで直線だ。
ここでは思いきり首を伸ばしてやり全速力で駆け抜ける。
みごとクレアの圧勝だった。
訓練兵全員3巡したところで、午前の訓練が終了。
冬でも脚と蹄はしっかり洗ってやり乾かす。
鞍、頭絡等の手入れをし、鞍の下のあて布を洗濯し、干す。
最後に蹄に油を塗ってから厩舎にかえし、水と飼い葉をやってようやく終了だ。
馬術訓練は準備も後片付けも時間がかかる。
全員が冷たい水で手を真っ赤にしたところで、ようやく昼休みだ。
リヴァイとハンジも訓練兵が宿舎に入って行ったのを確認してから裏口にまわった。
来賓室に入ると、2人分の食事が応接セットのテーブルに並べられていた。
熱々のシチューが美味しそうに湯気をたてている。
「わぁシチューだ、やったー!早く食べよう!」
ハンジは早速食べ始めた。