第14章 奇行種の妙案
エルヴィンはクレアのことを可愛いと思っているが、さすがに巨人は食べたくない。
リヴァイもまったく同じだ。
いくら自身が好きだと認めた女であっても、この本物と区別がつかない程のみごとな出来栄えの巨人を口に入れるのはさすがに無理だ。
2人が口をあけないのを不思議に思ったのだろうか。
「すみません…団長も兵長も、奇行種の方が良かったですか…?」
「「…………………」」
違う!そうではない!そこではないのだ!
2人は同時に心の中で突っ込んだが、ガラス玉のような蒼い瞳を潤ませながらシュンと見つめられてしまうと、どうにもこうにも断れなかった。
エルヴィンとリヴァイはチラリと目を合わせた。
腹をくくったのだろう。
口元まで突きつけられた巨人の腕を観念したように口に入れた。
「………………。」
俺は今、散々削いできた巨人の腕を食っているのか?
口を動かしながら若干冷静さを失いそうになるが、必死にクレアが言っていたことを思い出し、自身に言い聞かせた。
これはカボチャとさつま芋だ。
よくよく考えろ。甘いものは苦手だが、素材の味が活かされているためか、決して不味くはない。
丁寧に裏ごしされているのだろうか。口当たりもなめらかで、目を瞑って食べれば美味く感じなくもない。
きっとコイツの料理の腕は悪くない。むしろ上手い部類に入る。
しかし、ハンジを崇拝しているこの奇行種は、頭の中も時々奇行種になってしまうのだろう。
天才と馬鹿は紙一重という言葉があるが、まさにコイツにぴったりだ。
目を瞑ったままゴクンと飲み込んだリヴァイは、そんなクレアにも愛しさを感じてしまっている自分に思わずため息がもれた。
「まぁ、悪くない……」
「あぁ、見た目には驚いたが、味は美味い…」
その言葉を聞いたクレアは、先程のシュンした表情からパァっと、笑顔に変わる。
「よかったぁ!」
久しぶりに見たクレアの笑顔はあまりにも眩しくリヴァイの胸に突き刺さり、なかなか直視できなかった。
酒が進みだしたハンジはいつの間にかエルヴィンにからみだし、すっかり捕まってしまっている。
モブリットが必死に止めるが、お構いなしだ。
ちょうどいい。この隙に、ずらかろうとしたリヴァイは扉に手をかけたが、その瞬間に反対の腕を力強く掴まれてしまった。